歌舞伎町が再び血に染まる…誉田ノワールの真骨頂『歌舞伎町ダムド』ついに文庫化!【インタビュー】

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更新日:2017/6/4

『ジウ』の戦慄から6年――伝説の殺し屋集団〈歌舞伎町セブン〉が、新宿の裏社会に現れた! 誉田ノワールの決定版として話題を呼んだ『歌舞伎町セブン』。そのシリーズ第2弾『歌舞伎町ダムド』が、2月に文庫化された。歌舞伎町が再び血に染まり、〈ジウ〉サーガのすべてがここにつながる。誉田哲也さんのインタビューとともに、シリーズの魅力をご紹介!

ほんだ・てつや●1969年、東京生まれ。2002年デビュー。03年、『アクセス』でホラーサスペンス大賞特別賞受賞。警察小説「姫川玲子」や「ジウ」シリーズ、青春小説「武士道」シリーズなど、ジャンルを超えて高い人気を集めている。

 水銀の如く研ぎ澄まされた針で相手を即死させる凄腕の暗殺者・陣内陽一、現役暴力団組長・市村光雄、歌舞伎町随一の酒屋の娘・斉藤杏奈。彼ら7人からなる伝説の殺し屋集団〈歌舞伎町セブン〉が、新宿の裏社会を翔ける。目的は金ではない。新宿の街を、人を守るために。
『歌舞伎町セブン』のルーツは、誉田さんの少年時代にあった。

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「『必殺仕事人』シリーズが中学の頃から大好きで、いつか作品にしたいと思っていました。念仏の鉄が一番好きで、棺桶の錠や飾り職人の秀もかっこよかった。いっとき、シャキーンって秀の殺し技を真似してましたから(笑)。『歌舞伎町セブン』は13年前に消滅した〈セブン〉の復活劇。エピソードゼロのような位置付けですので、最初読者の方は気づかないと思うんです。でも途中で、〝誉田、『必殺』やりたかっただけじゃん!〟って笑いながら突っ込んでいただきたい(笑)。 『必殺』は法律に照らせば悪人ですが、弱い者の味方。僕はつねに、ダークヒーローが好きなんですね」

 姫川玲子、「ジウ」シリーズのジウや伊崎基子。いずれも善の中に悪、悪の中に善を抱く両義的主人公だ。ダークヒーローは誉田さんの作品に通底する大きなテーマであり、〈歌舞伎町セブン〉はその一つの到達点といえよう。そして彼らは、〈ジウ〉サーガを継ぐものでもある。『歌舞伎町ダムド』では、ジウに魅せられた殺戮者・ダムドが新宿に出現。〈セブン〉のメンバーであるミサキとジロウの過去が焦点となって、サーガすべてがここにつながる。

「ミサキとジロウの設定については、『歌舞伎町セブン』から決めていたんですが、それを明かさず書き切りました。ただ読者の方は感じ取ってくださっていて、〝ああ、やっぱり伝わるんだ〟と非常に驚きました」
 誉田さんが描く歌舞伎町自体も大きな魅力だ。閉鎖された新宿コマ劇場、陣内が営むバーに集う人々、街角の風景。すべてが有機的につながり、まるで街全体が生き物のようだ。

「歌舞伎町に詳しいライターさんやホストクラブの経営者さんなど、たくさんの方にお話をうかがいました。歌舞伎町は面白い街です。ほかでは味わえない、いかがわしさというか、ある種の幻想が人々を引き寄せる。歌舞伎町の住人は、そういう街のブランドを大切に守っているんですね。ダークな中に光が射し、でもやはり何かが潜んでいる。玉蟲色に光る街です。僕は、どの作品でも舞台を自分のものにできるまで、下調べや取材を繰り返します。対象に浸り続ける。作家は、そのままでは何も知らない空っぽの存在です。だから、この過程は極めて重要です」

 シリーズ最新作は、昨年刊行された『硝子の太陽N ノワール』。姫川玲子とのコラボという衝撃作だった。

「今後も〈セブン〉は続けたいと思いますので、ぜひ楽しみにお待ちください。今は、テレビシリーズのように、歌舞伎町の日常で彼らが活躍する中・短編を考えています」
 

伝説の〈ジウ〉サーガ とは?
 始まりは『ジウ』(1〜3)。残虐なカリスマ性を備えた少年ジウと、謎の組織〈新世界秩序〉が歌舞伎町を封鎖。所轄の門倉美咲とSATの伊崎基子が巨大な闇に立ち向かう。その2年後に起こるのが『国境事変』。新宿で在日朝鮮人が殺害され、美咲の上司だった捜査一課の東警部補は、公安部と激しく対立。『ハング』ではさらにハードな闇が描かれる。主人公は、捜査一課・堀田班の津原英太。殺人事件の再捜査をきっかけに、班を襲う死の連鎖に苦しめられる。
 そして『ジウ』から6年後、〈歌舞伎町セブン〉が新宿に現れる。『歌舞伎町ダムド』を経て、『硝子の太陽』二部作『N ノワール』『R ルージュ』で「姫川玲子」シリーズとコラボ。〈歌舞伎町セブン〉と〈ジウ〉サーガは、善と悪の本質を見つめ続ける。

正体不明の企業が歌舞伎町を蝕む ダークヒーロー、ここに復活!

『ジウ』の歌舞伎町封鎖事件から6年、新宿は再び脅威にさらされていた。町会長・高山が死体で発見され、杏奈の祖父・吉郎も姿を消したのだ。それは14年前の新宿区長の不審死ともつながり、背後には“岩谷”という正体不明の存在が蠢く。街の危機を救うため、13年前の火災で消滅した〈歌舞伎町セブン〉が復活。陣内たち7人は、驚くべき闇の正体と対峙する!

>>伝説の殺し屋集団〈歌舞伎町セブン〉とは?