『こまったこぐま こまったこりす』に4歳児も感動と興奮! 『からすのパンやさん』のかこさとしさんの隠れた名作

文芸・カルチャー

更新日:2018/5/7


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『こまったこぐま こまったこりす』(かこさとし/白泉社)

親から子へと読み継がれている絵本のなかで、今も大人気の『からすのパンやさん』や『だるまちゃんとてんぐちゃん』の作者・かこさとしさんの隠れた名作が、この春、新装版で発売されました。

こぐまがお友だちをおんぶしている表紙の絵を見ただけで、心がほんわか和むその絵本の題名は『こまったこぐま こまったこりす』(白泉社)。

表紙の動物たちはなんだか楽しそうに見えるけれど、何かこまったことが起こったようなのです。

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4歳の娘と一緒に、おそるおそるページをめくってみると……。

こぐまさんはどうやら迷子になった様子。

「ひとりであそんでいるうちに、いつのまにかとおくへきて、みちが わからなくなってこまりました。」

そこですかさず娘が言いました。

「Mちゃんも迷子になったことあるよ!」

と、なぜか自信満々な表情に吹き出しながら、
「そうだね」と返事をして、(スーパーに行くとすぐにどっかへ行っちゃうし、家の中でもしょっちゅうママを探しているもんねぇ)と内心つぶやきます。

こまったこぐまさんのところに、今度はこまったこりすさんがやってきます。こりすさんは、きのみを食べてのどがかわいたのに「かわも、いけも、みずのみばも みつからなくて、こまっているところなの」といいました。するとこぐまさん、「ぼくは、かえりみちをさがしているんだから、いっしょに さがそうよ」。こりすさんが「のどがかわいて あるけないわ」というと、こぐまさんがおんぶしてあげました。

こぐまさんとこりすさんは、こまったことりさんや、こまったみのむしさん、こまったこざるさん、こまったきつねさんにも出会います。こまっている子をみるとほうっておけないこぐまさん。「ぼくたちも みんなこまっているんだから、たすけてあげるよ。」「げんきをだして ぼくたちといっしょに みつけにいこうよ。」と声をかけて、あるけない子をどんどん背負って歩く姿に、胸がじーんと熱くなります。

こまったことばかり起こってしまった動物の子どもたちは、いったいどうなるのでしょう? 娘がだんだん不安な顔をしてきた頃、みのむしがあることを思いついて、こまったきつねを助けてあげました。

ところがホッとしたその瞬間、足をわなにはさまれたこじかさんに遭遇。動物たちは、慌てて近寄って助け出そうとます。そのときのみんなの知恵と工夫とチームワークの良さといったらありません!

感動した娘は「すごいね~。 こじかさん、足が痛くて泣いていたけど、わなからはずれて、みんながてあてしてあげたから、もうだいじょうぶだね!」と興奮気味の様子。

こじかさんがお返しに、こまったことりさんを助けてあげると、ことりさんもほかのお友だちを助けてあげられるようになり、次から次にみんなが笑顔になっていきました。

「こまったことはしょっちゅう起きるけれど、こうやってみんなで助け合えば、すごく嬉しいし楽しいし、いいことがいっぱいあるんだね!」と娘にいうと、満面の笑みで「うん! Mちゃんも、こまったお友だちがいたらたすけてあげる!」と満面の笑みでお返事。

大人も子どももあたたかい気持ちになれる、かこさとしさんのお気に入りの絵本がまたひとつ増えました。

文=樺山美夏