「結果」だけじゃダメ! 高い生産性を発揮し続けるために必要なこととは?

ビジネス

公開日:2017/3/8


 「生産性」という言葉が取り沙汰されるようになって久しい。政府も「働き方改革」を政策の一つにあげ、長時間労働を減らし、生産性の高い働き方を実現すべく動き出しました。私たち一人ひとりが「生産性の高い働き方」を実現するにはどうすればよいのでしょうか。ビジネスパーソンが継続して成果を出し続ける方法を説く『すごいプロセス』(三笠書房)で私は、ある仕事の結果を出すまでの「過程」、つまり「プロセス」にそのポイントがあると述べました。今回は『すごいプロセス』から、高い生産性を発揮し、好結果を生み出し続けるための考え方をこっそりご紹介しましょう。

■好成績を維持するには「正しいプロセス」が必要

 結果には「良質な結果」と「悪質な結果」があります。

「良質な結果」とは、正しいプロセスから得られた成果です。一方の「悪質な結果」とは、プロセスを省いたり、プロセスを通さずに得た結果です。たとえば、月末に売上が足りないからと、形だけの架空の売上を計上して数字を合わせる。これで目標達成すれば成績として認められるでしょう。しかし、表面上の成果はあがっているように見えますが、いつまでもそんな方法は通用しません。なぜなら、それは正しいプロセスを省いた結果だからです。

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たとえば、あるラーメン店に入ったとしましょう。お昼時とあって、席の8割くらいがお客様で埋まっています。結果を見れば8割埋まっていますが、それで流行っているお店かどうかを判断するのは早計です。そのお客様は、たまたま入店した人か、それともおいしいと思って来たリピート客かわからないからです。良質な結果とは継続性があり、次のプロセスのきっかけになるものです。ラーメン店の例でいえば、席を埋めている8割のほとんどがリピーターなら「良質な結果」ですが、すべてが新規客だったとしたら、それは決して「良質な結果」とはいえないのです。

■「よい売上」と「悪い売上」がある

 もう一つ、私が小売業にいたときに教えられた言葉です。

「売上には、よい売上と悪い売上がある」

「よい売上」は、定番商品や新しく提案した商品で出したものです。「悪い売上」は、あおるような売り方で得たものや、お客様が不利益になる売り方をしたもの、その価値以下の値引きによるものです。売上額が同じでも、「よい売上」によるものと「悪い売上」によるものでは価値が全然違います。「売上さえ上げればいいのだ」という考え方の責任者がいる売場は、数値が自然と下降していきます。それを私は、指導者の立場として嫌というほど見てきました。

■「目先の成果」ではなく「プロセス」に目を向ける

 さて、今までお話ししたことはごく当たり前のことです。これを、あなたの仕事に当てはめて考えるとどうでしょうか。 今月のあなたの結果は、良質な結果でしょうか。悪質な結果でしょうか。

 プロセスが誤っている、またはプロセスをカットしている進め方は、短期的な利益をもたらしたとしても、長期的な利益はもたらしません。それは、会社の経営にも当てはまります。企業が即戦力となる人材を求める傾向にも、プロセスを省いているリスクを感じることがあります。あのスティーブ・ジョブズもこんな名言を残しています。

「即戦力なんて存在しない。だから育てるんだ」。

 私は、即戦力となる人材を採用することに問題を感じるのではなくて、「即戦力となる人材なら教育というプロセスを省略できる」という考え方が問題だと感じるのです。経営にもプロセスが必要で、通常のプロセスを通らずに急成長した企業は、短期的には有名になったとしても、やがて淘汰されるのです。

 その意味からいうと、昇格試験でインバスケットゲーム(限られた時間の中で多くの案件を高い精度で処理するビジネスゲーム。多くの大企業の管理者やリーダーの選抜、教育に活用されている)が使われたとき、すぐに合格できるテクニックを教えてほしいという質問を受けますが、それもプロセスを飛ばしたリスクのある考え方です。「良質な結果を出すためにはどうするべきか」と考えている人も多いと思いますが、そもそもその考え方自体を変えるべきです。つまり、プロセスを重視する考え方に変えれば、自然と良質の結果になるのです。変えるべきなのは目先の成果ではなく、まずそこに行き着くまでのプロセスなのです

文=citrus 株式会社インバスケット研究所代表取締役 鳥原隆志

【関連書籍】

『すごいプロセス: 継続して成果が上がるインバスケット思考法』 (知的生きかた文庫)