15万部のロングセラー! 太平洋戦争当時の日系アメリカ人の葛藤をえぐり出した名著が、新訳で復刊! 移民二世の苦悩とは?

文芸・カルチャー

2017/3/8


img01
『ノーノー・ボーイ』(ジョン・オカダ:著、川井龍介:訳/旬報社)

1941年12月7日(現地時間)、日本軍の爆撃機がパールハーバーを襲う。この日からアメリカ合衆国に住む日系アメリカ人は「敵性外国人」になった。約12万人の日系人は、立退きを命ぜられ、7つの州の10ヶ所の収容所に隔離されたのだ。

砂漠や荒野に造られた収容所には、17歳以上の若者、約7万8000人がいた。彼らは、移民二世であり、アメリカ国籍を持つアメリカ人だ。アメリカ人なら、銃を持って戦え。日本人を殺せ。そう、突きつけられた彼らはどう行動したのか。

ジョン・オカダ氏が著した『ノーノー・ボーイ』(川井龍介:訳/旬報社)は、この史実を背景に創作された物語だ。オカダ氏自身が移民二世であり、アイダホ州ミニドカ収容所に入れられている。戦争に参加するか、徴兵を拒否して刑務所に送られるか、どちらを選択しても苦渋の選択だったに違いない。

訳者の川井龍介氏によれば、若者は、収容所で次の2つの質問を受けたという。

「あなたはアメリカ合衆国の軍隊に入り、命ぜられたいかなる場所でも戦闘義務を果たしますか」「あなたは無条件でアメリカ合衆国に忠誠を誓い、合衆国を外国や国内の敵対する力の攻撃から守り、また、日本国天皇をはじめいかなる外国政府・権力組織に対しても忠誠を尽くしたり服従したりしないと誓えますか」

この2つのいずれにも「ノー」と答えた者は、軽蔑の意味を込めて、「ノーノー・ボーイ」と呼ばれた。オカダ氏の『ノーノー・ボーイ』には、彼らの苦悩が鮮やかに描き出されている。

親は、日本人の移民一世。子供は、英語を母国語とするアメリカ人。民族間の葛藤が親子で繰り広げられた。

主人公のイチローは、「ノーノー・ボーイ」だ。徴兵を拒否したために、2年間刑務所に入れられた。その間に戦争は終わり、人々は日常を取り戻しつつあった。物語は、イチローが出所したところから始まる。

イチローは、母親に哀願され徴兵を拒否したが、それを後悔していた。母親は、日本が戦争に負けたことを認めず、日本に帰れる日を夢見ていた。父親は、全てを受け入れ日本への帰還はあきらめていた。弟は、アメリカ人として認められたいと願い、18歳になれば高校を中退して軍隊に入隊したいと考えていた。友人のケンジは、戦地で負傷し、切断しても足の壊死が止まらず、命の危険が迫っていた。彼は、ドイツ兵の若者をこの手で殺したことが忘れられない。

登場人物のそれぞれがそれぞれの立場で悩み、皆、希望を見つけようと必死だった。日本人としての誇りを忘れない移民一世。二世は、日本人とアメリカ人のはざまでもがいていた。

絶望のなかから、いかにして立ち上がるのか。

オカダ氏の日系アメリカ人二世独特の感情表現が巧みに訳され、胸に迫る名作がここに蘇った。

文=今眞人