Twitterで大反響! 家族全員で「死」を考える? 「もひかん家の家族会議」

出産・子育て

公開日:2017/3/14

『なんでも解決!もひかん家の家族会ぎ』(もひかん/ワニブックス)

 子どもの頃、お金持ちの親を持つことに憧れたことはないだろうか。自慢できる両親と大きな家に住み、高級な家具に囲まれて優雅に暮らし、ほしいものは何でも買ってもらえる。夢のような生活だ。大人になった現在、相変わらずお金持ちに憧れてはいるが、もっとほしいものがある。笑い声の絶えない明るい家族だ。どんなに辛くても、どんなに苦しくても、それを乗り越える明るさと強さがあれば、きっと人生は楽しくなるだろう。お金よりそんな家族が、そんな家庭が、私はほしい。『なんでも解決!もひかん家の家族会ぎ』(もひかん/ワニブックス)には、そんな家族を体現したような明るい家庭が紹介されていた。

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 本書の著者である「もひかん」は大阪府在住のトラック運転手で、5人家族の大黒柱。しかしある日、仕事中に大きな事故を起こしてしまい、その損害を支払うため会社に借金をすることに。そのときから「家族会議」が始まった。はじめは重苦しい「家族会議」だったが、もひかんの家族たちは底抜けに明るかったので、そのうち「家族会議」でお互いの良いところを褒め合ったり、他愛のない癖を面白がったり、お互いの良くないところを戒め合う大切な集まりへと変わっていった。

 もひかんがこの会議の議事録をたまたまTwitterにあげたところ、たくさんの人々の目に留まり、今ではもひかんのフォロワー数は7万人を突破。本書はこの会議の議事録を書籍化したものであり、もひかんとその家族たちの他愛もなく、どうでもよく、うらやましい家族愛が記されている。本書のごく一部を紹介していこう。

 2016年3月の家族会議で、もひかんの息子である「かずとよ」がある目標を発表した。

もひかん ほんだら、かずとよ。目標どうしようか。
かずとよ なごみ(もひかんの娘)のパンツ見ない。
ママ   見るんか、おまえ(笑)。
もひかん いつ見てんの?
かずとよ スカートにラーメンこぼして、ぬれたのを拭いてるときとか――。
ママ   ただの変態やん。
一同   (笑)

 我が息子がよりによって我が娘のパンツを盗み見ている事実が家族会議に挙がる…。これはけっこうな事件ではないだろうか。普通の親ならなんと叱るべきか頭を抱えるだろう。しかしご覧のようにもひかん家ではあっけらかんとした反応。これがもひかん家の家族会議なのだ。このような和気あいあいとした家族会議が本書に載せられている。

 2016年5月の家族会議では、もひかんの祖母「ばあば」が元気なうちに「ばあば」が死んだときのことを考えようという話し合いになった。その話し合いの途中から紹介したい。

かずとよ ねえ、泣いてるの?
ばあば  あんまりなあ、べたべたしとってもしんどいことはしんどいやろから、みんなそれぞれ好きなようにしてって思っとるんやけどな。
なごみ  (泣)
もひかん うん。でも(ばあばが死んだところを)想像したら悲しなる。
ばあば  だから、それが大事なんや。そうやってな、泣いてくれるって思うのがうれしいねん。おばあちゃん(泣)。
もひかん そうやな。

 家族全員で家族の誰かが死ぬときのことを考える。これはなかなかできないことではないか。家族といえど、辛気臭い雰囲気に耐えられなくてどうしても避けたくなる話題だ。しかしもひかん家では、この問題に家族全員で涙を流しながら、お墓の話や気持ちの話としっかり向き合っている。

 正直なところ、本書には特別なことが書かれているわけではない。ちょっと変わった家族の面白エピソードが書かれているだけだ。しかし読んでいるうちにこの家族がうらやましくなってくる。借金を背負っているのに、首が回らなくて苦しいのに、みんな底抜けに明るくて、お互いを支え合い、毎日を笑いながら生きているのだ。今日を少しでも楽しく生きるための工夫を家族全員で挑んでいる光景がたまらなくうらやましい。これこそ世間の人々が目指している幸せの姿ではないか。お金や名声、浮気や不倫ではつかみきれない幸せの姿だ。本記事を書く際、もひかんのTwitterを拝見したが、今でも相変わらず家族会議は続いているようだ。ということは、今日ももひかん家は笑顔であふれている。私はもひかん家のような家庭がほしいから、今日も必死こいて頑張ろうと思う。

文=いのうえゆきひろ