もしも自分が「乳がん」といわれたら…。がん治療の最前線「国がん中央病院」の乳がん治療とは?

健康・美容

2017/3/18


『国がん中央病院がん攻略シリーズ 最先端治療 乳がん』(国立がん研究センター中央病院乳腺外科、乳腺・腫瘍内科、他/法研)

 小林麻央さんが自身の乳がんの闘病をつづったブログは読者登録数180万人を超え、多くの人々がエールを送っている。がんは今や不治の病ではないが、今日もがんと闘っている多数の人がいるのも事実である。「日本人女性の11人に1人が一生のうちに乳がんになる可能性がある」といわれても、自分はならない、と思いたい。でも、もしも大切な人や自分自身が「乳がん」になってしまったら…。そのときにはだれでも、一番良い治療を受けたいし、受けさせたい。知らなかったということで、後悔したくない。そのためには、最新の正しい情報が必要なのだ。そんな人にこそ読んでもらいたいのが、『国がん中央病院がん攻略シリーズ 最先端治療 乳がん』(国立がん研究センター中央病院乳腺外科、乳腺・腫瘍内科、他/法研)である。

 今、「乳がん」の治療では、ひとりひとりのがんの特性に合わせた「個別化治療」が進んでいるという。他の人には効かなかった治療が自分には効くかもしれないし、逆の場合もある。本書には、だからこそ知っておきたい乳がんの特徴、検査と診断、治療方針の検討、治療の選択、といった基礎知識に加えて、最新・近未来の治療法など、日々進化している“乳がん治療の最前線”が紹介されている。例えば、「乳がんの基礎知識」の章には、「病期・がんの性質別にみる治療法の選択」のチャート図がある。そこに使われている医学用語も、順をおってイラストなどでわかりやすく解説されている。たとえ診察室で頭が真っ白になってしまったとしても、あとで落ちついて整理するのに、きっと役立つはずだ。

 さらに、「乳がんに対する最新・近未来の治療法」の章では、最先端の“治験(臨床試験)”などが取りあげられている。中でも、今、新しいタイプの抗がん薬として注目を集めている「分子標的薬」には、「がん細胞の増殖を抑える薬」「がん細胞に対する免疫機能を活性化させる薬」などがあり、これまでより効果があり副作用が少ない薬を目指し治験がすすめられているというから、期待できる。また、これからの「遺伝子診療」につながる「多遺伝子アッセイ(乳がんの遺伝子を解析してその抗がん薬が効くタイプか調べる検査法)」などについても解説されている。そして、「手術療法」については、「乳房切除と同時に乳房再建を行う環境が整うとともに、無理な乳房部分切除術は減少している」という。以前はリンパ節も含め大きくとってしまうことが再発予防に良いとされてきたが、現在はできるだけ小さく部分切除する方法が主流となっている。

 ところが、命は助かっても、無理な部分切除術で乳房の変形に悩む人が実は増えていたのだ。皮膚や乳頭を温存し、最近保険診療で認められた再建を同時に行い、手術後の胸を形よく整えることも大切、と考えるのが最先端の考え方であることがわかり、心強い。万が一、乳がんであることが判明した場合、治療法はどう決めればいいのか。本書によれば、「患者さん一人ひとりに対し、さまざまな条件を加味して、医師と患者さんがともに治療方針、治療法を検討し、決定していくことが重要」だという。さらにこう続ける。「実際に治療を行っていくうえでは、治療費のほか、家族構成、仕事や働き方といった社会的・経済的な側面も大切です。さらにどのような人生観をもっているか(生きていくことにおいて何に価値観を置くかなど)は人によってさまざまです」。治療を受けるのは、「がん細胞」ではなく「人」だから、最良の治療は人によって違う。だからこそ、最新の医療情報をぜひとも知っておきたいものだ。

 国立がん研究センター中央病院で、診療科の枠をこえてチームで取り組む最新の集学的治療などが凝縮されている本書。「乳がん」と闘う人やその身近な人だけでなく、「国がん」の最新治療を知りたい医療スタッフにもおすすめの1冊である。

文=秋月香音