鉄道開発は街づくりだ! 日本の鉄道と街の発展、その利点と課題とは?

ビジネス

公開日:2017/3/15

『2030年日本の鉄道未来予想図』(洋泉社)

 今年の5月と6月にいよいよデビューが迫ってきた新たな豪華列車「TRAIN SUITE 四季島」(JR東日本)と「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」(JR西日本)。ニュース番組でも取り上げられ、その優雅なスタイルと設備に目を奪われた人も多いだろう。その分、乗車料金も高額なのだが予約は殺到しており、価格以上の価値がそこにはあるのだ。本書『2030年日本の鉄道未来予想図』(洋泉社)では、そんな新型車両の紹介をはじめ、全国各地の最新鉄道整備計画など、豊富なビジュアルを用いて鉄道の近未来を多角的に検証している。

 冒頭に取り上げられるのは、都内の「品川新駅(仮称)」開業と周辺地区再開発事業だ。2020年に山手線・京浜東北線田町~品川間で暫定開業が予定されている「品川新駅(仮称)」を中心として、JR品川車両基地跡地を利用し、新たに街を創るというものだ。隣接する品川駅は東海道新幹線停車駅でもあり、羽田空港から直通の京急線も乗り入れる。また2027年開業予定とされているリニア中央新幹線も東の起点は品川駅だ。いわば、東京への玄関口ともいえる品川駅の北側一帯を再開発するものである。

 小生も以前は通勤で京浜東北線に乗り、車両基地を車窓から眺めていた。田町から品川にかけて数多くの車両が待機していて、特急車両などに目を奪われたものだ。しかし、その車両たちが他の車両センターへ移動し留置線もどんどん撤去され、どうなるのかと気にはなっていたので、新駅設置と周囲の再開発には今後も注目している。ただし、街の整備自体は2024年ごろになる模様。

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 また駅周辺の大規模再開発は、2023年完成予定の大阪駅周辺も取り上げられている。大阪駅も梅田貨物駅跡の広大な敷地を利用し、新たに街と新駅をつくるのだが、こちらの新駅は地下に建造するという。現在、関西国際空港へ向かう特急「はるか」や紀勢本線へと向かう特急「くろしお」が線路配線の都合で大阪駅に乗り入れない貨物線を介して走っており、現状では西日本最大のターミナル駅を素通りしてしまう。そこで、すぐそばであるこの地に「北梅田駅(仮称)」を設置し、乗り換えの利便性を図ろうというのだ。先述の品川駅界隈もそうだが、どちらも商業施設が並ぶ繁華街となり、空港からの客が流れてくるのは間違いないだろう。

 このように、鉄道を街づくりの中心に置けば、集客数は上がりやすくなる。しかし、都市部はこうした再開発が進んでいるが、地方ではそうもいかない。2016年11月18日、JR北海道は自社単独で維持困難な路線を公表した。その10路線13区間にわたる対象路線の営業距離は1237.2kmにおよび、これは現在のJR北海道の総営業距離2552kmの約半分に相当する。国鉄時代から徐々に赤字路線が廃線の憂き目にあい、JR北海道発足後もこの30年で624.6kmもの鉄路が姿を消していった。

 勿論、JR北海道とて廃線だけを行なっている訳ではない。利便性と集客性を上げるため、3月のダイヤ改正に伴い、特急列車の再編や流氷見学の観光列車を復活させている。また沿線自治体としても、日高町が一定の地元負担を検討する考えをJRに伝えたという。自治体側もJRだけに丸投げせず、地域の足を守るためには投資が必要なのだ。

 広大で人口密度の低い地域では、どうしても都市部のような鉄道運営は無理。廃線後はバスで代行する地域も多く、昨年12月に廃線となったJR北海道留萌本線留萌~増毛間も従来あるバス路線が活用される。しかし、欧米諸国では同じような条件でも「鉄道は赤字が当然で、公共交通インフラのひとつとしてしっかりと維持していく」という考えがある。人口減少が進む地方において、人の往来を活発化させるためにも、輸送人数の多い鉄道の活用は有効なはずだ。鉄道ファンとしては、やはり「乗って応援」をしたい。

文=犬山しんのすけ