出産・子育て

なぜ、学校が“ブラック化”してしまうのか? 「子どものため」という意識が学校教育の問題だという事実

『ブラック化する学校(青春新書インテリジェンス)』(前屋 毅/青春出版社)

 会社に始まり、アルバイト、保育所、そして学校。世の中がブラック化しつつある。少子化なのに、なぜ学校がブラック化するのか。教育や指導以外の多くのことが、学校に求められているからだ。教師は各所からさまざまな要求を受け、多忙を極めている。

『ブラック化する学校(青春新書インテリジェンス)』(前屋 毅/青春出版社)は、教師が自殺予防やいじめ対策に当たることは当然ながら、それが「最優先」と位置づけられていることに違和感をあらわにしている。自殺予防やいじめ対策が教師の最優先課題なら、授業の準備や学校行事などは「二の次にしていい」ということになるが、そんなことが許されるはずはない。つまり、教員は、授業の準備も学校行事も、自殺予防やいじめ対策も「最も」優先される事項なのだ。責任を押し付けられる教師の苦労が絶えない。

 本書によると、労働者全般の1日当たりの平均労働時間が9時間15分(2007年の連合総合生活開発研究所の調査による)なのに対して、小学校・中学校の教員は13時間にのぼる。これは平均値なので、もっと働いている教師が存在する、ということだ。

 この状況に、諸外国が「さすがは教育熱心な国」と賛辞を送ることはない。教育的成果に釣り合わない労働時間を冷ややかに見ているようだ。

 なぜ、日本の学校がブラック化するのか。制度や労働環境の問題はもちろんあるが、本書は問題の背景に、「子どものため」というマインドが働いていることを指摘している。

 保育や教育を語るとき、「子どものため」と口にすると、それが正論のように聞こえることがある。教育者の大半は「子どものため」と心に思い、ときには言葉にして、保育・教育に勤しむ。2015年に北海道教育大、愛知教育大、東京学芸大、大阪教育大の4大学が行った共同調査によると、小学校教員の86%、中学校教員の82%が、教員の仕事について「楽しい」と答えたという。もちろん、長時間労働が楽しいわけではない。子どもを愛し、「子どものためなら」と考え、厳しい労働環境を承知しながら教職に就く。

 知られているとおり、教師に残業代は出ない。本書によると、それを逆手に取ってか、書類作成をはじめ、どんどん雑務を押し付けてくる管理職がいるという。残業という概念がないので、管理職は自らの管理能力を問われることがない。むしろ、人に次々と仕事をさせて、上から要求された書類を整えていけば、それが自らの評価になる。本当は時間を授業の準備に費やしたい教員だが、「子どものため」と自らに言い聞かせて雑務をこなしていくことで、学校がますますブラック化していく。これに加えて、昨今の要求が多い保護者の対応、学力が二極化する生徒に対する難しい学習指導や生活指導などが重なってくる。

 学校がブラック化することで、最も被害を受けるのは子どもだ。まずは、大人が教師の置かれた状況を正確に知ることから、ブラック化する学校の改善が始まると本書は述べている。

文=ルートつつみ



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