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29歳での「うんこお漏らし」が世界を変えた! 世界初の「排泄予知デバイス」の開発秘話とは

『10分後にうんこが出ます 排泄予知デバイス開発物語』(新潮社)

 「お漏らし」ほど、人を絶望させ、動揺させる出来事はない。大人になってから漏らしたことのある経験者によれば、一度漏らした経験をすると、「また漏らしてしまうのでは」という恐怖から、外出するのが怖くなるという。排泄しない日はないのだから、危険は日常に溢れている。この危険は、私たちが排泄をし続ける限り逃れることはできないのだろうか。

 中西敦士の『10分後にうんこが出ます 排泄予知デバイス開発物語』(新潮社)では、排泄の不安を解消できる画期的なアイテム「DFree(ディーフリー)」の開発秘話が描かれている。「DFree」は、おしっこやうんこが出るまでの時間を予測して知らせるウェアラブル端末。サイズはマッチ箱程度で重さは70グラムにも満たないから手軽に用いることができる。

 仕組みはシンプル。下腹部に装着した本体が、超音波で取得した情報をBluetooth経由でスマートフォンに送り、ユーザー本人や介護担当者に「何分後におしっこやうんこが出るか」が知らされるというもの。「DFree」の「D」は「おむつ」を意味する「diaper」の頭文字で、「free」は英語の「自由」「とらわれない」「解放」の意。予期せぬ「お漏らし」を回避し、「おむつから自由になる世界」を目指し、そう名付けられた。

 そもそもこの端末のアイデアが生まれたきっかけは中西氏が29歳に経験した「うんこお漏らし事件」。ビジネスを学ぶためにアメリカに留学していた彼は、バークレーの道端でズボンをはいたまま、自分のお腹にたまっていたものをドバーッと漏らしてしまった。その瞬間から彼の人生は大きく変わったという。事件以来、彼は「どうすれば同じ悲劇を繰り返さないで済むか」を四六時中考え、「一生うんこをしなくてもよくなる手術ができないものか」「うんこが体外に出る時に自動的にラップされて出てくる仕組みは作れないか」「うんこの臭いを消すことはできないか」など思いを巡らすようになった。

 会社の設立、資金集め、特許の出願、たくさんの仲間との出会い…。今までなかったデバイスの開発には幾多の苦労があったが、その誕生秘話の中で一番衝撃的だったのは、試作機を作成するために行われた実験だ。実験台となったのは、「DFree」開発を技術面から支えた正森良輔氏。まずは、超音波診断装置で腸内の様子がどうなっているかを知るために、どこが直腸かを人間の身体を使って画像で確認しなければならない。中西氏は「どこが直腸か画像でわからんなら、直腸になんか突っ込んでみたらどうやろ」などという無茶を注文。恐ろしいことに正森はこれを拒絶せず自らの肛門にソーセージを突っ込み、超音波診断装置をあてて実験を続け、見事直腸の場所を突き止めた。そして、どの位置に便がある時、便意を感じるか、逐次記録。「便意というものは意識しだすと、常にあるように感じる、非常に感覚的なものなんだね。これは単なる友だちだと思っていた女の子を、一度意識しだすと、好きで、好きで、たまらないという思いにとらわれる。そんな恋心と一緒やね」実験を終えた正森氏は何かを悟ったのか哲学的なこと言い出したという。

 世の中には、大腸がんの手術をした人、認知症になった人など、便意を感じられず漏らしてしまう人もいる。「DFree」はそんな人たちにとっても強い味方になるに違いない。もちろん「DFree」には「排泄予測」の精度を上げるため、端末から集められた情報が匿名の情報としてフィードバックされる機能も備えている。多くの人が使えば使うほど、データが蓄積され、世界で初めて「排泄のビッグデータ」が誕生することになる。このデータを中西氏は今後どう活かしていくのか。彼の挑戦はまだ始まったばかりだ。

文=アサトーミナミ



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