社会

「Twitterで息子を監視する母」「いいね!さん」ネットの中の奇妙な人々の正体とは?


『インターネット文化人類学』(セブ山/太田出版)

 インターネットの中には不可解なヒトや出来事が日常的に存在する。ネットは巨大な仮想空間とはいえ、実在の人間や社会が作り出しているもの。ネットの奇々怪々な現象は何から生み出されるのだろう。

 そんなインターネットの謎について、リアルに追究してみたのが『インターネット文化人類学』(セブ山/太田出版)だ。ネットの中の奇妙なヒトや出来事について、インタビューや実験を敢行。その結果あらわになったものとは、どんなものなのか。

パクツイは承認欲求の塊

 パクツイとは他人のTwitterのつぶやき内容(ツイート)をそのままパクる“パクりツイート”のこと。パクツイばかりのTwitterアカウントはけっこう存在し、日々他人のツイートをパクりまくっている。パクツイ常習犯はなぜ、なんのためにパクツイするのか? セブ山氏は自分のツイートをパクった相手を偽の理由でおびき出し面会することに成功。やってきたのは感じのよい男子大学生。意図を明かしたうえでインタビューをしわかったのは、「誰かに認めてもらいたい! でも、どうしたらいいのかわからない!」という心の叫び。フォロワーの増加やRT数ほしさに、おもしろいツイートを見つけるとついパクってしまうという。そこに意味はない、元ネタに悪いとわかっていてもやめられない。パクツイは彼にとって承認欲求を手軽に満たす甘い蜜なのだ。

Twitterで息子を監視する母

 物心ついたときからインターネットが当たり前のデジタルネイティブ世代にとって、ネットは現実世界と直結している。仲間うちへのアピールのため、なんでもかんでもTwitterでつぶやいてしまうらしい。インタビューの相手は、ネットに疎いふりをして裏でしっかり高校生の息子の全Twitterアカウントを特定し、監視を行っているお母さん。ツイートから息子の行動をほぼ把握できるという。どのくらい情報がだだもれなのかというと、息子が童貞喪失した日も特定できるほど。このお母さん、監視の目的は息子が悪い方向にいかないようにすることで、行動を制限することではないという。当初、さすがにこれはやりすぎではと悩み学校に相談したところ、「学校の教師たちはほぼ全校生徒のTwitterを特定済みです。そのまま静かに監視し続けてください」との答えだったそうだ。

いいね!さん

 Facebookの最大の特徴は、他人の投稿に“いいね!”ができることだが、セブ山氏の友達リストに何にでも“いいね!”を押してくるヒトがいる。「テスト」と書いたテスト投稿にまで“いいね!”を押してくる。なぜ彼はそれほどまでに“いいね!”を押しまくるのか聞いてみた。彼の“いいね!”は意味合いが人と違う。投稿内容の良し悪しは関係ない。彼の“いいね!”は、あなたが生きている今日への“いいね!”。ハイタッチするような感覚で“いいね!”押しているのだそうだ。この世界を“いいね!”と思えるかぎり、彼は今後も“いいね!”を押し続けるという。

 

 他にも炎上経験者やアダルトチャットレディへのインタビュー、TwitterとFacebookではどちらがヤレるか実験、LINEスタンプで儲ける方法など、実証を中心に数々のインターネットの疑問解明に挑んでいる。

 インターネットで検索すれば何がしかの答えは得られるが、まだまだこの世は実際やってみないとわからないことばかり。「知りたいと思う気持ち」が大事で、知ろうとすること。それが人生を楽しくする、とはセブ山氏のことば。

 インターネットでさらっとわかった気になりがちだが、インターネットで出くわす「何だ、これ?」を深掘りしてみると見える世界はまた違うもの。インターネットの向こう側をのぞいてみたい人、インターネットの使い方に不安がある人、インターネットを人生を楽しくする道具として活用したい人におススメの一冊だ。

文=高橋輝実



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