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自衛隊の攻撃が全く効かない『シン・ゴジラ』のゴジラ。 どのくらい強いのか?

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 筆者はかつて、『ゴジラvs柳田理科雄』という本を書いたことがあります。すごい書名だけど、すごいのはそこだけ。中身は「ミニラはゴジラに似ていないけど、本当に息子なのか!?」や「エビラはエビの怪獣なのか、ザリガニの怪獣なのか!?」など、人類の発展にまったく寄与しないコトをいっぱい研究した本であった。

 なぜそんな本を出したかというと、それは2004年に東宝が『ゴジラFINAL WARS』という映画を作ることになったから。タイトルどおり「これが最後のゴジラ映画」というので、「それはあまりに悲しいから、ゴジラ映画だけで一冊書かせてください!」と頼み込んで、「♪さようならゴジラさん」という自作の歌を口ずさみながら、公開に合わせて執筆したのである。いや~、あのときは本当に悲しかったなあ。

 ところが! 2016年の夏、ゴジラシリーズの新作『シン・ゴジラ』が公開されてしまった。えっ、『FINAL WARS』が最後じゃなかったの!? あれが終わりと信じて、本まで出しちゃった筆者の立場は……!?

 などと複雑な気持ちで観に行ったところ、『シン・ゴジラ』はとても面白かった。やたら会議のシーンが多い映画だったけど、原発事故のときの政府の混乱ぶりを目の当たりにしたわれわれには、会議でのやり取りもリアルに迫る。いまだからこそ生まれたゴジラ映画といえよう。筆者はたちまち『ゴジラFINAL WARS』のときの悲しい気持ちを忘れ、すっかり『シン・ゴジラ』にのめり込んでしまいました。

 そんなワケで、拙著『ゴジラvs柳田理科雄』をお持ちの皆さん。えー、今後増刷する可能性もゼロになりましたので、書棚の奥深くにしまってください。珍品として、いつか価値が出るといいんだがな~。

 どれだけ攻撃されたのか? というわけで、『シン・ゴジラ』について考えたい。驚いたことに、今回のゴジラはどんどん姿を変えていった。最初は、住宅街の川を遡る不気味な生物だったのだが、政府の対応が後手にまわるうちに、どんどん巨大化。最終第4形態では、身長118.5m、体重9万2千tとなった。これはデカい! ゴジラ62年の歴史のなかでも、最大の巨体である。

 そして、とてつもなく強かった。自衛隊がどれほど攻撃しても、ビクともしない。アメリカ軍の攻撃には傷を負うが、秘めた力が覚醒し、手の打ちようのない事態に陥ってしまう……! ここでは、自衛隊が行った攻撃を挙げてみよう。それは、6次にわたって展開された。

・第1攻撃、対戦車ヘリから20㎜機関砲。なんと1万6千発を全弾命中させた!
・第2攻撃、戦闘ヘリから30㎜機関砲!
・第3攻撃、対戦車ヘリからミサイル!
・第4攻撃、戦車と自走砲から砲撃!
・第5攻撃、富士山の裾野から長距離ロケット弾!
・第6攻撃、戦闘機から爆弾投下!

 これほどの攻撃を試みたのに、どれもまったく効かない! 第6攻撃など、調べてみると2千ポンド(炸薬量400kg)爆弾で、体重あたりのダメージでは、人間がプロ野球選手2人に同時にバットで殴られるのと同じなのに。それでもゴジラは平気なのだから、もうどうしたらいいんだか。

熱線でビルをスパスパ切る!
自衛隊の攻撃がまったく効かず、ここで日本政府は、アメリカに協力を要請した。アメリカ軍の攻撃は、地中貫通爆弾。これはゴジラの皮膚を破って爆発し、負傷させる。ところが、これがゴジラを覚醒させてしまう。怒ったゴジラは、口から熱線を放ち、爆撃機を撃墜。さらに背中からも20本あまりの熱線を放ち、これで高層ビルをスパスパ切り始める。いよいよ手がつけられなくなった!

 科学的に興味深いのは、光線でビルを切っていたことだ。コンクリートの主成分の二酸化カルシウムは、825℃以上になると、二酸化炭素と酸化カルシウムに分解する。ゴジラの熱線は、それを上回る高温だったのだろう。

 具体的な温度はどれほどか? 背中から発射された光線の太さは1mほどで、一辺50mほどのビルが一瞬で切断された。ビルを切断した時間が0.1秒だったとすると(そのくらいに見えた)、熱線の温度は825℃どころではない。熱線が当たった部分は、16万℃に加熱されたはずなのだ。16万℃! これに耐えられる物質はない。宇宙のどこにも存在しない。もう、どうしようもありません。

がんばれ新幹線&在来線!
これほどすごいゴジラが結局どうなったかは、映画で確かめてもらうとして、筆者が胸躍らせた攻撃シーンについて、ちょっと触れさせていただきたい。それは、新幹線爆弾! なんとゴジラへの攻撃にボクらの新幹線が投入され、そのとき初めて、過去のゴジラ映画でも繰り返し使われてきた勇壮な「自衛隊マーチ」が鳴り響いたのだ! 東京駅で活動を停止しているゴジラに、N700系新幹線2編成が突っ込んでいく。画面下のテロップには「N700系新幹線(無人運転)」とあったから、無人操作の新幹線に爆弾を積んで、ゴジラにぶつけたのだろう。筆者はこのシーンにいちばん胸が躍りました。

 その後あれこれ攻撃した後、再び電車攻撃! 今度は、山手線や京浜東北線などの列車が、ガーッと5編成ほどゴジラに向かっていく! テロップには「無人在来線爆弾」。やー、すごいすごい、がんばれ電車!

 まさかゴジラ映画で在来線が活躍するとは思わなかったが、筆者はここで少し気になった。在来線と新幹線だったら、やっぱり新幹線のほうが優れた車両なのではないか。自衛隊の攻撃でも、どんどん威力がエスカレートしていったのだから、先に在来線爆弾で攻撃して、最後に新幹線爆弾を見舞うべきではないのか……と。

 ところが、調べてみると意外なことがわかった。新幹線の線路は、1両あたり64tの重さに耐えられるように設計されている。N700系1両の重さは44tだから、1両に20tを積むことができるわけだ。これに対して、在来線の線路は60tにしか耐えられないが、たとえば通勤電車に使われるE231系は車重が30t。よって30tを積める計算になる。

 つまり、在来線は新幹線の1.5倍もの重量を運べるのだ。考えてみれば、乗っているお客さんの数は在来線のほうが多いから、これは当然かもしれない。ということは、爆弾をより多く積めるのは在来線! 無人列車爆弾として優れているのも在来線! 『シン・ゴジラ』のおかげで意外な事実がわかりましたなあ。

 では、その破壊力はどれほどか。山手線は11両編成だから、1両に30tの爆弾を積むとしたら、1編成あたり330t。東京駅の地上ホームには、山手線、京浜東北線、中央線、東海道線、横須賀線などが乗り入れているから、合計5編成なら1650tである。これは人間が爆薬1.3kg(ダイナマイト6本分)の爆風を浴びたのと同じであり、ゴジラに対してもかなりの効果があったと思われる。実際に1650tとは、戦闘機から落とした2千ポンド爆弾4100発分だ。劇中ではそんなに落としていなかったから、電車攻撃は自衛隊の攻撃を上回ったのだ。ますますスゴイぞ、電車!

 自衛隊もがんばったけど、それ以上に電車の活躍が光った『シン・ゴジラ』。掛け値なしの傑作である。

◆著者プロフィール
柳田理科雄
空想科学研究所主任研究員。代表作に「空想科学読本」シリーズ。また、各地での講演、ラジオ・TV番組への出演なども精力的に行っている。

◆関連リンク
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公式ツイッター:@KUSOLAB



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■作品紹介 マンガやアニメ、特撮映画などで描かれる設定やエピソードは、科学的にどこまで正しいのだろうか? 初刊行から20年、累計500万部突破のベストセラー『空想科学読本』シリーズから、原稿31本を厳選、全面改訂して収録する。本書で検証するのは『ウルトラマン』『ONE PIECE』『名探偵コナン』『シン・ゴジラ』『おそ松さん』など、世代を超えて愛される作品の数々。爆笑の果てに、人間が描いた夢の世界の素晴らしさが見えてくる!

◆プロフィール
柳田理科雄
1961年鹿児島県種子島生まれ。東京大学理科Ⅰ類中退。96年、経営していた学習塾の赤字を埋めるために『空想科学読本』を執筆したところ、60万部のベストセラーに。だが、塾は潰れてしまい、99年空想科学研究所を設立して研究と執筆に専念。2007年、希望する全国の高校図書館に向けて「空想科学 図書館通信」の毎週無料配信を開始する。13年スタートの『ジュニア空想科学読本』(角川つばさ文庫)が小中学校でブームになるなど、読者層はいまなお拡大し、著書の総累計部数は500万部。明治大学理工学部非常勤講師も務める。
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