「継子をかわいく思えない」「継父の存在がいや」―「子連れ再婚」の実態と支援【著者インタビュー】

恋愛・結婚

2017/3/22

『日本の子連れ再婚家庭 再婚して幸せですか?』(新川てるえ/太郎次郎社エディタス)

 以前担当した『堂々再婚』(WAVE出版)という本のインタビューに対して、転載されたサイト上に読者から「再婚もいいけど、子どもを犠牲にするのだけはやめて」というコメントが付いた。

 確かに連れ子を虐待する事件は後を絶たず、今年2月にも妻の連れ子の双子を「スポーツの延長」と言って虐待した男が逮捕されている。もちろんお互いに連れ子がいても、幸せに暮らしている再婚カップルは多いことだろう。しかしこのような事件が起こると、やはり考えてしまう。

 記事の反響と事件へのモヤモヤを抱えながら『日本の子連れ再婚家庭 再婚して幸せですか?』(新川てるえ/太郎次郎社エディタス)を手に取ったところ、帯に書かれた


「継子をかわいく思えない」(30代・女性)

「ただ漠然と継父の存在がいやでした」(20代・女性)

 の文字がいきなり目に入った。やはり現実はこうなのか――。

 著者の新川てるえさんにそう問うと、「私も継子をすごくかわいいと思えなかったし、実子のように愛せなくて辛いこともあった」と告白した。

 NPO法人M-STEP理事長で家族問題カウンセラーの新川さんは、自身も過去に、子連れ再婚家庭を解消している。とはいえ新川さんは、シングルマザー支援のNPO法人を運営していた2000年ごろまでは、ステップファミリー(子連れ再婚家族)にそう興味はなかったそうだ。

「その当時は自分もシングルマザーでしたが、まだ別れたばかりで恋愛しようという気分ではなく、ステップファミリーへの問題意識もまったくありませんでした。しかし3度目の結婚をした際、相手に子どもが2人いて継母を初めて経験したんです。その時継子は2歳と11歳だったのですが、上の子は夫の前妻の子で、実の親が家庭にいない状態だったせいか荒れてしまって。また2歳の子のことも、自分の子と同じように愛せない葛藤を抱えてしまったんです。8年間で関係を解消しましたが、ステップファミリーには行政の支援や相談窓口がないことを痛感していました。だから1人親だけではなくステップファミリーを支援するために、M-STEPを立ち上げました」

 同書に登場する当事者119人の声を見ると、

「継子をかわいいと思えない」

「子供がふえて経済的にきつい」

「継子のことがきらいなのに「かわいいね」「すごいね」と言わなきゃいけないのもつらい」

「いつも緊張して、安らぎがない」

 といった、正直すぎる言葉が並んでいる。

 なかには

「継子との絆は深まったと思う。つらいのは、夫がいる生活」

 と、継子より夫の存在をうとましく感じる声も寄せられている。

 しかしこれらは当事者が集まる場だから吐き出せた本音であり、ステップマザーやファーザーは言いたいことを言葉にできず、抑圧を感じている人も多いそうだ。

「ステップファミリーの場合は、誰かに相談しても『お母さんになったんでしょ? あなたがしっかりしないと』とか『よく家族で話し合って』などと言われがちです。一番身近な夫に相談するにしても、『あなたの子どもを愛せないんですけど』とは言えないですよね?

 また童話に登場する継母はほとんどが子どもに意地悪だけど、実際には継母は子どもに面と向かって意地悪しませんし、むしろ世間のネガティブなイメージに苦しんでいます。でも他人の子どもを育てることは、並大抵の覚悟ではできません。だから継母になることを受け入れた人はむしろ、愛情や責任感が人一倍深いのではないかと思うんですよね」

 もちろん苦しい思いをしているステップファミリーばかりではないと、新川さんは力説する。ではうまくいっている彼ら彼女らは、どうやって乗り越えたのか?

「うまくいっているステップファミリーは夫婦ともに問題を理解していて、一緒に解決策を考えていることが多いです。ステップファミリーこそ結婚前にいろいろ話をする時間が必要で、セメントベビー(再婚夫婦間の実子)を持ちたいかについても、話し合ったほうがいいと思います。『なるようになる』『多分うまくいく』みたいな根拠のない自信を持つのが、一番ダメなパターンです。

 年月の積み重ねでお互いの関係も変わってくるし、10年ぐらいステップファミリーを続けていると解決とまではいかなくても、うまくかわす方法が身につくはずです。また継子を実子と同じように愛せないのは仕方がないことだけど、長い年月をともに過ごすなかで、仲間としての情が芽生えると思います。再婚して2、3年では、家族になれなくて当たり前かもしれません」

 パートナーによる虐待から実子を守ったり、両者の間で板挟みになったりして苦しまないようにしながら、家族としての関係を築く方法はあるのだろうか?

「子どもは実の親が守るしかないので、だから結婚前に必ず、相手と子どもの関わり方を見極めておかないと。でも妻が継父の暴力に耐えたり、ネグレクトをしてしまったりする気持ちを全く理解できないとは言いません。自分の子どもの世話をしてもらったり、経済的負担をしてもらったりしている負い目があると、強いことは言えないのかなと。そこで私がルールにしていたのは、私の子どもを怒りたい時は直接怒らずに私に言ってもらい、私から言うことでした。別の本を執筆している際に再婚家庭の子どもにアンケートを取ったら、『実の親でもないのに怒られたくない』みたいな意見が圧倒的でしたので、継親は怒らないほうがいい。むしろ実の親に怒られた子どもを、サポートする役に回る方がうまくいくと思います」

 この本は決して、1人親に「再婚っていいよ」と勧めるものではないと新川さんは語る。ステップファミリーの実態を知って心構えをするためのものであり、また彼ら彼女らの支援に役立てて欲しいと願い、書いたそうだ。

「初産と2度目以降のお産と似ていて、突き当たる壁の高さは同じでも事情を分かってるとラクになれるし、心の準備もできます。『知っているのと知らないのでは違うよ』ということを伝えたくて、まとめました。

 日本では里親さんに対しては『他人の子どもを育てて偉いね』『頑張ってるね』と激励する人が多いのに、ステップファミリーには『再婚したんだし自己責任で』と言ってしまいがちです。しかしステップファミリーだって、もっとしんどさや大変さを理解してもらってもいいはず。だから再婚を考えている1人親はもちろんですが、彼ら彼女らの抱える葛藤や実態を支援者がこの本で学び、サポートの場で生かしてもらえたら嬉しいですね」

取材・文=玖保樹鈴