祝! JR発足30周年! 鉄路の軌跡を当時の時刻表とともに振り返る!

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公開日:2017/3/23

『時刻表が刻んだあの瞬間──JR30周年の軌跡』(松本典久/JTBパブリッシング)

 1987年4月1日に国鉄からJRへと移行してから、今年で30周年を迎える。これだけの年月を重ねると、もはや国鉄という言葉すら馴染みがない読者もいるだろう。かつてJRは地方ごとに存在する企業ではなく、日本国有鉄道法に基づき運営される公社だったのだ。それが分割民営化されて以来、辿ってきた30年の軌跡を『時刻表が刻んだあの瞬間──JR30周年の軌跡』(松本典久/JTBパブリッシング)で振り返ってみたい。

 本書は1925年創刊され現在まで続く『JTB時刻表』をJR発足後の30年分から抜粋して掲載している。当時の時刻表を復刻しているだけでなく、鉄道事情やその背景も紹介。中には発足後に登場したものの、意外に早く引退してしまった列車たちの姿も見られて感慨深くなる。

 また、元愛知県民としては、1992年東海道新幹線に「のぞみ」として運行を開始した300系が忘れられない。『JTB時刻表』1992年3月号の項目ではその話題と時刻表が掲載。300系は運行開始前から、たびたび次世代の新幹線として話題になっており、最高運転時速270kmは、元祖新幹線である0系の最高時速220kmを上回る性能。顔つきも角ばっており0系とは違う印象に憧れたものだった。しかし、前年の1991年11月に「のぞみ」の運行ダイヤが発表されると、当時の愛知県民に激震が走った。覚えている読者もいるだろうか、「のぞみ」が名古屋駅を通過して運行する、通称「名古屋飛ばし」を。

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 本書によると「のぞみ」は東京~大阪間の所要時間を「ひかり」の約2時間50分から、大幅に短縮した2時間30分で結ぶことになる一方、この所要時間を確保するため、朝の新大阪行き「のぞみ」は新横浜に停車、名古屋・京都を通過する運行だった。それに対し名古屋経済界は大騒ぎだったと記憶している。なにせ当時の愛知県知事や愛知県選出の国会議員、JR東海労働組合までもが反対表明を出していたのだから。

 名古屋の経済界としては、新しく運行される「のぞみ」が当地を素通りすることは、イメージダウンに繋がると懸念したのだ。東京・大阪に次ぐ大都市としてのプライドが許さなかった面もある。もっとも「名古屋飛ばし」運行は朝の1本だけだったので実はさほど実害もなく、1997年11月のダイヤ改正以降すべての「のぞみ」は名古屋停車となる。

 そんな「のぞみ」も2012年3月17日からN700系がすべて担うことに。すでに「のぞみ」の定期運行から外れていた300系も、前日の臨時「のぞみ」を最後に引退となる。わずか20年間の活躍は、昭和の車両に比べて短く感じたものだ。他にも昭和の頃より活躍し続けた新幹線0系や100系、電気機関車に引かれた寝台特急ブルートレインたちの引退時の話題が掲載されている。

 ところで時刻表が毎月発行されていることを不思議に思う人も少なくないようだが、その理由は季節列車や臨時列車、線路保守工事の情報を載せるため。意外と臨時の貨物列車や保守工事は各地で頻繁にあるものなのだ。ちなみに小生が初めてJTBの時刻表を購入したのは2000年ごろ。当時すでにネットで時刻検索もできていたが、単純に好奇心で購入したのだ。開くとその名の通りびっしりと網羅された時刻表が飛び込んできて、ついつい自分が利用しない路線の工事情報まで読み入ってしまっていた。

 その工事情報の中には、廃線もしくは新設に伴う線路切り替えもある。JR発足以来30年間に廃線も増えているが、新たに他社線と乗り入れたり新型車両も導入したりするなど、日々進化を続けている。北海道新幹線や九州新幹線、北陸新幹線だって実は未完成で工事は終わっていない。30周年はあくまでひとつの節目に過ぎないが、これまでの変化を本書で振り返り、まずは「これまでお疲れさまでした。これからも頑張って」と応援する次第である。

文=犬山しんのすけ