世界一のナンパ師に真の愛は訪れるのか? スワッピング、ハーレム、新しい恋愛スタイルを探した4年間の実話

恋愛・結婚

公開日:2017/3/26

『ザ・ゲーム ──4イヤーズ』(ニール・ストラウス:著、永井二菜:訳/パンローリング株式会社)

 もしも現在のパートナーに満足しているとして、ある日突然、理想のタイプが目の前に現れ、こう囁いたらあなたはどうするだろう?

「今すぐ二人きりになりたい。遊びでかまわない」

『ザ・ゲーム ──4イヤーズ』(ニール・ストラウス:著、永井二菜:訳/パンローリング株式会社)はシンプルかつ本質的な問題を読者に突きつける究極の恋愛レポートだ。即ち、「人は一人の相手で満足できるのか?」著者が実際に経験した4年間の試行錯誤から、パートナー以外の人間に目移りしてしまう人も貴重な教訓を得ることができるだろう。

advertisement

 著者、ニール・ストラウスはベストセラーとなったナンパの指南書、『ザ・ゲーム』シリーズで一躍有名になったライターである。見た目にコンプレックスがあり、冴えない性生活を送ってきたニールだったが、ナンパアーティストの取材を続けるうち、自らも技術を習得、見違えるようなモテ男に生まれ変わったのだ。

 ナンパ界のカリスマとなり、女性には不自由しなくなったニールだったが、彼にも運命の恋人、イングリッドが現れる。浮気癖を止めなければ別れると迫るイングリッドのため、一対一の関係(モノガミー)を実現させようと、ニールはセックス依存症のリハビリ施設に入院するのだった。

 しかし、奔放な性生活に明け暮れていたニールがストイックな施設のカリキュラムに耐えられるはずはなかった。カウンセラーを論破したり、女性の参加者に劣情をもよおしたり、一向に治療は進まない。カリキュラムの中でニールは母親から植え付けられたトラウマを発見し、向き合うことになるが、中途半端な形で退院してしまう。ほどなくしてイングリッドとの生活は破綻。かくしてニールの導き出した答えは…。

無茶できる。好きなだけ女遊びができる。いつ誰に何をメールしてもかまわない。いよいよ究極の男女関係を探求できる。

 そしてニールの酒池肉林の日々が始まる。まずは、パートナー同士が複数の愛人を作ることを奨励する「ポリアモリー」に惹かれ、ペルーにまで飛び「世界ポリアモリー大会」に参加する。次に、美女たちに誘われてスワッピングに挑戦し、パリでは乱交パーティーにも繰り出す。挙句には、美女3人を誘って、ひとつ屋根の下で愛の共同生活を開始しようとするのだ。

 これだけ書くと(特に男性からは)羨ましがられるかもしれない。実際、まるでアダルトビデオの世界が現実になったような描写が満載で、イングリッドと別れてよかったのでは? と思わず考えてしまいそうになる。しかし、現実は甘くない。老人の集まりだった世界ポリアモリー大会にはのめり込めずに追い出され、スワッピングの最中には居眠りをしてしまう。ハーレムでは、3人の美女が嫉妬にまみれて諍いを繰り返し、公平さを守るために毎晩、一人ソファで眠ることになる。

 そう、複数の女性を追い求めることは自由と同義ではなかった。それが分かっていても、どうしてニールはモノガミーから逃げ出してしまうのか? 葛藤と失敗の連続、その果てでニールが気づいた真実は、ぜひ読者自身で確かめてほしい。

 本書は刹那的なセックスや享楽的なライフスタイルは(ときには有料で)簡単に手に入るが、愛を得ることは困難だと教えてくれる。だから、ニールがどれだけ多くの女性と関係を持とうとも、満たされることはない。そこには本物の愛が存在しないからだ。イングリッドを除いては。

 浮気の虫が騒ぐとき、風俗嬢を呼びたくなったとき、どうするべきかニールは具体的な対策を思いつく。

まずはオナニー、次に検討だ。

 性欲のせいで人間関係や金銭面で悩みが生じているなら、今日からでも試してみてほしい。

 オーランド・ブルーム、マリリン・マンソン、リック・ルービン(レッド・ホット・チリ・ペッパーズなどを手掛けた音楽プロデューサー)など、ところどころで登場するセレブリティーたちの言動も読みどころの一つだ。

文=石塚就一