清少納言は愛すべき“負け犬”だった

更新日:2012/5/21

 下種(ゲス)、ブス、田舎者が大嫌い。「春は、あけぼの」という美辞に続くのは、歯に衣着せぬ清少納言の本音の嵐だった……。上品で高貴な印象が強い随筆集の裏を、「負け犬」ブームの火付け人が暴露。枕草子に関する愛&棘のあるエッセイや、原文の解説、さらに著者と清少納言との「対談」がREMIX状態! そんな『枕草子REMIX』(新潮文庫)を著者の酒井順子さんに語ってもらった。

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 私、古典を全然読んだことがなかったんです(笑)。30歳を過ぎてから、「自分と同じ“エッセイ”を書いた人が1000年前にいて、『枕草子』という名著が残っているのに、一度もちゃんと読んだことがない」と思って、原文を読んでみました。

 こんなに面白かったとは!と、読んで衝撃を受けました。清少納言は、嫉妬もするし、意地悪な心もあるし、専業主婦的な女性に対して「エセ幸い(ざいわい)」と言う。今とまったく変わらない“感情”の部分に、感動しました。

 笑える話や自慢話など、「女子校」みたいな女房たちの社会も面白い。男の人とのかかわりがあった話とか、偉い人から気に入られた話とか。話が無防備ですよね(笑)。その「女子校感」が、私にとって一番共感できるところでした。自分と似ている部分もあるのかな、と。

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 働く女で、子どもはいるけど、たぶん離婚状態。そんな清少納言は、私が『負け犬の遠吠え』で書いた負け犬みたいでもありますね。男に伍するところがあって「女受けがいい」というのも負け犬と共通している部分です。

 頭がいいので、周囲の笑いもとれる。そして、意地悪で(笑)。人気者として活き活きと生きる清少納言は、読んでいて小気味よいです。私もこの時代に生きてたら、彼女を好きだっただろうな。私だけでなく、現代の女性みんな、特に働く女性にとって、清少納言は「お友だちになりたい」と思わせる人ですね。

(ダ・ヴィンチ2月号 文庫 ダ・ヴィンチより)