マネジメントは「進捗」が大事! 会社を辞めたい人にも知ってほしい「インナーライフワーク」とは?

ビジネス

2017/3/30

『マネジャーの最も大切な仕事 95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力』(テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー:著、樋口武志:訳/英治出版)

 ドラッカーブームで一躍世間に広まったマネジメント。この度、アメリカから、現在世界のトップ企業が実践するマネジメントを紹介する本が入ってきた。『マネジャーの最も大切な仕事』(テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー:著、樋口武志:訳/英治出版)だ。ハーバードの教授と心理学者が、実際に企業で働く1万人以上の人々を調査し、その結果から導いた、成功する企業のマネジメント法である。

 調査対象の一社であるグーグルは、世界中で誰もが知る企業のひとつ。フォーチュン誌発表の、「最も賞賛される企業」「最も働きがいのある企業」トップ5に毎年ランクインし続けている。前者の「賞賛される」は、優れたマネジメント力を持つ会社が高評価を受けるランキング、後者の「働きがい」は、社員が会社を愛しているほど高評価を受けるランキングだ。普通は、管理されると社員の不満が高まるので、この2つ同時にランクインするのは難しい。では、これができる企業、いってしまえば世界的な力のある企業は、そうでない企業と何が違うのだろうか。

 その答えが、インナーワークライフを生み出せているかどうかだという。インナーワークライフとは、個人的職業体験と訳される。簡単にいうと、従業員が仕事そのものから得られる経験や感情のことだ。福利厚生や給与が充分なのに越したことはないが、それ以上に、仕事が楽しいか否か。つまり、「仕事そのもの」に満足しているかというのがポイントだ。自分の仕事が社会の利益に繋がる実感があり、同僚との仲が良好で、自分が尊重されている感覚が持てる環境がベストだとされる。

 ではどうやってインナーワークライフを生み出せばいいのだろうか。その鍵は、個人の性格や資質とは関係がなく、組織の良好な人間関係にあるそうだ。そして、良い人間関係は、上に立つ者の良いマネジメントから生まれるという。それが、ずばり「進捗」だ。上司が部下の仕事を「管理」するのではなく、「進捗」に注目することが、良いマネジメントなのだそうだ。部下を一から十まで指示通りに動かすのではなく、部下自身がアイデアを出し、自分の裁量で動ける態勢にする。といっても放置するのではなく、上司は部下のプロジェクトの進み具合を見て応援するのだ。

 それは、ほんの些細なことでもいい。例えば、ソフトウェアエンジニアのヘレンは、部署が忙しいにもかかわらず、プロジェクトマネジャーから、子どもの学校行事に合わせて快く休みをもらえたことで感謝の念を抱いた。結果、彼女は翌日からより積極的に組織に貢献する仕事ができたという。また、夜中にひとりで作業しなければならなくなった時、自分では買わないような高級なミネラルウォーターを差し入れてもらった。マネジャーが自分の仕事を認識していて、気を配ってくれていることがわかって嬉しかった。結果、この状況に不満を抱かずに達成感まで得られたという。

 このような「進捗」に注目するマネジメントが効果的だとする結論は、企業と従業員の関係において、次のような真実を浮かび上がらせることにもなった。それは、「会社でのパフォーマンスという価値を越えて、人は人間としての価値を持っている」ということだ。仕事とは、自分を押し殺して組織に従うものではない。役職ごとに組織の中での役割がそれぞれに違っても、お互いを人として尊重しあえる会社が、良い組織、トップ企業の条件のようだ。

 残念ながら今の日本には、人間としての価値を踏みにじられる会社がかなりの数あるようだ。会社を辞めたいと悩む人も多いだろう。そんな中、組織の健全性を測るモノサシとして、上記の一言は役に立つのではないだろうか。堂々と辞めるべきなのか、それとも尊厳が与えられなくても留まることの利点をはっきりさせて、割り切って進むのか。ボロボロになってわけがわからなくなる前に、自分と会社の関係を冷静に見つめる指針になりそうだ。

文=奥みんす