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素人同然の「勇者」が魔王討伐に挑む!……のをこっそり助ける簡単なお仕事です。WEB小説発、まったく一筋縄では行かないファンタジー『誰にでもできる影から助ける魔王討伐』2巻


『誰にでもできる影から助ける魔王討伐』(槻影:著、bob:イラスト/KADOKAWA)

  いま、ライトノベルやライト文芸界隈では、異世界に転移あるいは転生した主人公の活躍を描く、いわゆる「なろう系」と大雑把に呼ばれるファンタジージャンルが全盛を誇っている。ジャンルとしては目新しいものではなく、古くは『オズの魔法使い』や『ナルニア国物語』など源流となる様々なファンタジーやジュブナイルが存在し、日本にも『聖戦士ダンバイン』などが存在するが、ライトノベルでの現在の盛り上がりは、ヤマグチノボルの『ゼロの使い魔』シリーズ(MF文庫J)などが発端ではないかと思う。そこに拍車をかけたのが、「小説家になろう」をはじめとするWEB小説投稿サイトだ。WEB小説として発表され、現在は商業ベースで大ヒットしているシリーズは、『Re:ゼロから始める異世界生活』『幼女戦記』『オーバーロード』『この素晴らしい世界に祝福を』など枚挙に暇がない。

 今回紹介する『誰にでもできる影から助ける魔王討伐』は、そんな流れの中から生まれた作品のひとつで、KADOKAWAの運営するWEB小説サイト「カクヨム」主催のカクヨム大賞で見事大賞を受賞。1月に第1巻が刊行された。

 物語の骨格は「異世界転生ファンタジー」ではおなじみのタイプだ。魔王が出現し、危難に陥った人々が異世界人を召喚。勇者として召喚されたのは日本人の少年で――という、王道にもほどがあるプロローグが語られるが、しかし主人公はこの日本人勇者ではない。主人公は、召喚されたばかりで素人同然の勇者をサポートし、魔王討伐を成功に導く任務を負わされた一人の青年僧侶、アレス。そう、 召喚された者ではなく、それを迎え入れる側の世界の住人が主人公なのである。

 異端殲滅教会序列一位、高レベル僧侶として圧倒的な実力を持つ異端殲滅官アレスが引き合わせられた勇者一行は、藤堂直継をはじめ剣士アリア、そして魔法使いリミスの三人 だった。だが、あろうことか勇者以外の二人も低レベルの素人という有様。自身のレベルを隠して彼ら を育成しながら、どうにか魔王討伐までの道筋がたったと思った矢先、アレスはメンバーに男は無用という理由 でパーティをクビになる。

 主人公が勇者パーティからいきなり外されるというアグレッシブな展開。しかしこの理不尽な仕打ちにも関わらず、アレスは勇者たちの道行きを人知れず手助けすることになる。それは、正義感などではなく「教会のビジネス」として要請された結果であった。

 邪悪なる存在を討ち滅ぼす正義の勇者。その華々しい物語の陰には、召喚した王国側の打算や、それに対処する教会側の利害もうごめいているのである。第1巻では、勇者たちの成長とともに、魔王討伐の英雄物語の生々しい舞台裏も描かれる。

 そして3月30日に発売となった第2巻では、パーティをクビになったアレスが相変わらず勇者一行に振り回される姿が描かれる。邪な者を祓うべき勇者がアンデッド恐怖症であることが発覚したり、アレスの天敵ともいうべき異端殲滅官グレゴリオが出現したりと賑やかだが、一方で勇者とはそもそもなにか? という問いかけも鋭く描かれる。どこか無邪気な様子が抜けきれない勇者一行をどうレベルアップさせていくのか? この調子で果たして魔王討伐にたどり着くことはできるのか? そんな繰り返し襲い来る難題に、アレスは「ビジネス」として冷静に対処し、結果を出していく。

 とはいえ、アレスも普通の人間である。無茶苦茶な理由でパーティをクビになっても、勇者たちの無用な正義感が引き起こす数々トラブルに襲われても、上司の無茶ブリに苦悩しても、それでも彼が任務を投げ捨てないのはなぜか? 恐るべき精神耐性を持つ彼すらも苦悩させる藤堂直継がどんな勇者になっていくのか?

 同じ「勇者を外側から眺める」立場として、アレスに深々と感情移入しながらその成長物語を堪能できる異世界転生ファンタジーの快作である。

【書誌情報】

■『 誰にでもできる影から助ける魔王討伐』特集ページ

誰にでもできる!『誰にでもできる影から助ける魔王討伐』の僧侶アレスを影から助けるプロジェクト実行中!

みんなで応援ボタンを押して、アレスがちょっと幸せになる短編や、アメリアの応援ボイスを聞こう!

■『誰にでもできる影から助ける魔王討伐』カクヨム連載ページ



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