23年前の練馬一家殺人事件、その「復讐劇」が幕を開ける――。元科学捜査官が描く警察サスペンス『トレース』

マンガ

更新日:2019/11/28

『トレース 科捜研法医研究員の追想』(古賀慶/徳間書店)

 「元科学捜査官」という異色の経歴を持つマンガ家・古賀慶さんのデビュー作『トレース 科捜研法医研究員の追想』(徳間書店)。自らの知見をフルに活用して描かれる本作は、細部にまで徹底されたリアリティとシリアスなストーリーが評判を集め、第1巻は大重版がかかったという。そんな話題作の第2巻が2月20日(月)に発売された。

 本作は、冷徹なロボットのように検査に明け暮れる科捜研のエース・真野礼二と、「正義のヒーロー」に憧れを抱く新人・沢口ノンナのふたりが、不可解な事件の真相に迫る警察サスペンスだ。彼らが検査するものは、非常に多岐にわたる。唾液、精液、血痕、中絶された死産児……。それらはすべて、事件を解決するための「真実の欠片」。真野の言葉を借りるならば、「鑑定結果こそが真実」。容疑者の言葉も、捜査官の意見も何ひとつ信じられるものではない。現場に残された「証拠」こそが、事件の真相を物語るのである。

©古賀慶/NSP 2016

 日々舞い込む、さまざまな事件の調査。強盗殺人事件、強姦事件、無理心中……。ふたりの手によって暴き出される真相は、時に残酷で、時に切ない。意外なことからひっくり返る展開に、読者は何度も驚かされるはずだ。

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 そして、本作を語るうえでどうしても外せないのが、真野の過去だろう。23年前に発生した、練馬一家殺人事件。真野はその事件の生き残りなのだ。では、真野は「家族が惨殺された事件の真相を暴くため」に捜査官になったのだろうか。どうやらそんなに単純ではないようだ。真野が過去を思い返すたび、その行間に滲むのは「復讐」の二文字。

©古賀慶/NSP 2016

©古賀慶/NSP 2016

 第2巻のラストでは、練馬一家殺人事件のキーパーソンとなりそうな3人の名前が明らかにされる。そして、呟かれる「悪を裁くのは我々です」という不穏な言葉。どうやら、ついに真野の復讐劇がスタートするようだ。

©古賀慶/NSP 2016

 ノンナの先輩が口にする通り、現場に残された証拠を消すことができる科学捜査官ならば、完全犯罪が可能。すなわち、真野の復讐は誰にもバレることがない。しかし、本当にそれでいいのか。「事件の被害者」と「真実を探求する捜査官」、その狭間で揺れ動く真野はどこにたどり着くのだろうか。手に汗握りながら、この物語を追いかけていきたい。

文=五十嵐 大