宅配便の荷物はどうやって配送される?! 子供と絵本で楽しく学ぶ、宅配便の仕組み

出産・子育て

更新日:2017/4/11

『ねこのたくはいびん』(奥野涼子/講談社)

 宅配便といえば昨今、日々配達される荷物の多さにドライバーたちの負担が増えているというニュースが話題だ。宅配業者も負担軽減策として、配達時間指定枠の変更などが行なっており、例えばヤマト運輸では今年の6月中に12時から14時の指定ができなくなるとか。連日の報道で大変さばかりが印象に残るが、そもそもどのような仕事なのだろうか。この機会に知っているようで知らない宅配便の仕組みを調べていると、こんな絵本をみつけた。それが『ねこのたくはいびん』(奥野涼子/講談社)だ。

 作者は宅配便配達員の経験があり、集配から配達までの流れがとても分かりやすく解説されている。勿論、子供が楽しめるようにそのタッチは柔らかで可愛らしく、また登場人物はみんな猫として描かれている。

 ある日、猫の「にゃんた一家」が友達の「ねこきちさん」の家に宅配便でプレゼントを贈ることになった。にゃんた親子が綺麗な箱にプレゼントを詰めてから電話で集配を依頼すると、しばらくして宅配業者が到着。にゃんたが荷物を手渡し、すぐそばで見ている子供たちの期待と不安の入り混じった表情に見送られ「にゃんたの荷物」は旅立っていく。

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 では、どのように荷物が配達されるのか。各家庭から預けられた荷物は営業所に集められ、そこからさらに大型トラックで「ターミナル」と呼ばれる大きな集配所に運ばれる。エリア内の各営業所から一度ターミナルへ集められた荷物は地域ごとに仕分けされ、その夜のうちに配達地域のターミナルへ大型トラックで運ばれる。到着する頃にはもう深夜だが、早速そこでも仕分けされ、配達地域への営業所へと早朝の内に運ばれる。そこでもすぐさま細かく仕分けされ、そして朝の8時半からドライバーたちが配達するという流れだ。

 そして場面は配達先営業所の駐車場に移る。そこに描かれているのは、箱型の小型トラックや冷凍冷蔵トラック、自転車やバイクに手押し台車など。これらの車両を読者諸氏も一度は見たことがあるだろう。小型トラックの一台を見ると、その荷台の窓の中に「にゃんたの荷物」が描かれている。実は営業所から運ばれる場面以降の各ページには、その荷物が必ずどこかに描かれており、子供がそれを探し出すという楽しみもある。子供に読み聞かせるときには、ぜひ一緒に探してあげてほしい。

 描かれるドライバーの行動も、配達先でクール便や着払いを扱ったり、不在票を入れたりと大人には馴染みの光景だが、子供にはとても新鮮に見えるはずだ。とくに企業宛の配達で「ねこやましょうじさま、おにもつ ぜんぶで5つに なります」なんてセリフは普通の絵本ではあまり見られない言い回し。だが子供は案外とそれを喜ぶもので、小生自身も昔、テレビで見たビジネス用語を真似して遊んだことを懐かしく思い出した。

 本書は絵本であるだけに至ってシンプルな構成だが、細かい解説などもされており大人が再発見することも多い。各所の解説には荷物に貼られる伝票の内容、料金の決まり、荷物には番号が付けられてコンピューターで管理されていることなどが書かれており、子供の視点で見ればとてもすごい秘密を知った気分になるのではないだろうか。そこから宅配便に親しみを感じる子供が増えるかもしれない。大人の視点で見ても、正しくドライバーの業務を知ることができる。

 最後は無事、ねこきちさんの家に「にゃんたの荷物」が届く。そこに描かれたドライバーとねこきちさん、そして子供たちの笑顔にとても温かいものを覚えた。読者諸氏も子供の頃、荷物が届くとワクワクした覚えがあるのではないだろうか。大切な荷物を運ぶことは「人の笑顔を運ぶこと」でもあるのだろう。改めて宅配業者の方々に感謝の念を覚える次第である。

文=犬山しんのすけ