ビートたけしが最先端の科学者たちと刺激的トーク! カラスの雌に激怒され、ゴリラの群れで小突かれる…珍エピソード!

エンタメ

2017/4/9

『たけしの面白科学者図鑑』(ビートたけし/新潮社)

 頭の良い人ほど変わっていることが多い。物事が見えすぎると、思考回路も感性も一般人とは別のベクトルへ向いてしまうのだろうか。『たけしの面白科学者図鑑』(ビートたけし/新潮社)は、ビートたけしが生物学者との対談を通して、生き物の面白すぎる生態を紹介している。

 「ゴリラの子育てがスゴい!」「深海はダイオウイカだらけ?」「死なない虫“ネムリユスリカ”って?」などなど、目からウロコの愉快なサイエンストークが満載だ。ところが本書の面白さはこれだけではない。サイエンストークを披露する生物学者のみなさんも面白いのだ。そこで今回は一風変わった生物学者の面白エピソードをご紹介したい。

■カラス研究者の奇妙な日常

 東京大学総合研究博物館特任准教授でカラス研究者の松原始さんは、街中でカラスの観察をしている。カラスの生態を調べるには捕まえるのが一番なのだが、カラスは賢いのでなかなか捕まえられない。捕獲を諦めた松原さんはカラスから目を離さないよう追いかけながら観察しているのだが、そのため2度ほど車に轢かれかけたらしい。川を飛んで越えていくカラスもいるので、橋を使わず川を渡ったこともあるとか。カラスのゴミ漁りも観察するので、ノートと双眼鏡を構えて歌舞伎町に出かけたこともあるそうだ。凄まじい執念。脱帽でしかない。

 カラスの雌に怒られたエピソードもある。あるとき雌のカラスを観察していると、雌のカラスが松原さんを威嚇してきた。なんとかなだめようと「カカカカカカカ」と鳴いてみたそうだ。すると雌のカラスは羽を広げて松原さんにエサをねだり始めた。あとから分かったそうだが、実はこの鳴き声、雄のカラスが雌のカラスにエサを置いていくときの鳴き声だそうだ。それを知らない松原さんはもう一度鳴いた。カラスはまたエサをねだる。そして松原さんが鳴いた3回目のとき、カラスは「こいつ絶対に違う」と気づき、猛烈に怒り始めたそうだ。日夜研究で苦労されていると思うが、これは自業自得だろう。

■ゴリラ研究者のきっかけ

 ゴリラを研究している京都大学大学院理学研究科教授の山極壽一さん。京都大学の学生だった頃は、ニホンザルの研究をしていた。大学院でもニホンザルの研究をしていたのだが、だんだん人間に近い類人猿をやりたくなったそうだ。そこで動物園にいるゴリラを見に行ったら感激したとか。

ゴリラというのは人間を超えているなと思ったんです。サルでもチンパンジーでも何となくコセコセしているじゃないですか。ゴリラはそれまで見てきたサルや類人猿とは全く違ったんです。

 それから山極さんは研究者としてアフリカに行き、ゴリラの人付け(ゴリラの動作や声をまねて、ゴリラを人に慣らすこと)を経験。ゴリラの群れの中に入って、ゴリラの一挙手一投足をまねながら小突かれていたそうだ。下手にまねるとゴリラは怒るので、声まねも何もかもゴリラが認めるほどやってのけたそうで、これまた脱帽ものである。

 本書はこの他にも「ウナギ」「ダニ」「オオカミ」など、驚きの面白生態サイエンストークと生物学者の変わったエピソードを紹介している。

 本書は面白いのだが、同時に考えさせられる1冊だ。ある対象を研究するには、1つの物事を様々な角度から見つめて検証を行う頭脳が必要なので、一般人の脳みそではおよそできない。ちょっと変わった視点を持っている必要があるのだ。頭の良い人に変わり者が多い理由は分からないが、科学者に変わり者が多い理由は、本書を読み通して理解することができた。

文=いのうえゆきひろ