死ぬ気がないのに“うっかり自殺”しようとした……。ツイッターで話題の過労死マンガ『「死ぬくらいなら仕事辞めれば」ができない理由』

マンガ

更新日:2017/5/1


『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(汐街コナ:著、ゆうきゆう:監修・執筆協力/あさ出版)

 いわゆるブラック企業で働き、過重労働によって死を選ぶ“過労自殺”や、オーバーワークが原因とされる“過労死”のニュースが連日取り上げられ、働くことそのものが問われている昨今。それらの悲しいニュースを聞くたびに「死ぬくらいなら、会社を辞めればいいのに」という感想を持つ人も少なくないだろう。しかし、現実にそれができていれば、過労自殺のニュースが報じられることもないはず。

 一見すると、死ぬよりも簡単そうに思える“会社を辞めること”ができない現実と心理状態を描いているのが、4月10日に発売された『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(汐街コナ:著、ゆうきゆう:監修・執筆協力/あさ出版)だ。同作は、著者の汐街コナさんが、過去に経験した「働きすぎてうっかり自殺しかけました。しかも、そんな気(死ぬつもり)なかったのに」という過労体験を軸に、過労状態やうつ状態から抜けだした人への取材を刊行。精神科医のゆうきゆう先生の監修のもと書籍化したコミックエッセイだ。

 汐街コナさんが、最初に自身の体験をツイッターに投稿した際には、30万リツイートを記録し「これ私のことだ」「リアルすぎて泣ける」という コメントが続出した。

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 彼女が駅で思いついた「素晴らしいアイディア」は、そのまま“死”を意味する。なかでも印象的なのは、今一歩踏み出せば“死ねる”ではなく“明日は会社に行かなくていい”と考えたところではないだろうか。長時間労働によって思考力が奪われ、己の判断基準のすべてが仕事に囚われていたのかもしれない。うっかり自殺しかけたことで、「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせていた彼女は、本気で転職に踏み切ったという。

 生きるための判断力を完全に奪われたとき「死ぬくらいなら会社を辞める」ができないまま、限界を迎える……。負のスパイラルに陥ってしまうのだ。

 そのほか「心を病むのはその人が弱いから?」「追いつめられるとなんで『死ぬくらいなら会社辞めれば』ができないの?」などの疑問にゆうきゆう先生が回答する質問コーナーや、ブラック企業で限界を感じ、転職や職場環境を変えた人々の実体験を紹介している。なかには読者が共感するエピソードもあるかもしれない。

 今、仕事を辞めるつもりがない、もしくは辞められないと感じていたとしても『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』というタイトルに反応したならば、自分の仕事、生活、命について考える絶好の機会なのかもしれない。

文=真島加代(清談社)