ズルい男との恋愛、カラダだけでつながる2人…ハマる読者続出! 話題沸騰のコミック『liar』

マンガ

更新日:2017/4/12

『liar』(袴田十莉:作画、もぁらす:原作/双葉社)

 思わせぶりな態度で翻弄してくるのに、好きとは言ってくれない。関係もはっきりさせてくれない。そんな男やめなよ! と人には簡単に言えるのに、自分のことになるとズルズルと関係を続けてしまう……そんな経験、オトナ女子なら一度はあるのではないだろうか。

 まさにそんな恋愛模様をリアルに描いたマンガ『liar』(袴田十莉:作画、もぁらす:原作/双葉社)が、オトナ女子の共感と胸キュンをかっさらいまくり!と話題だ。これまでは電子でしか読めないデジタルコミックだったが、現在ダウンロード数は350万を突破する勢い。電子での人気を受けてついに紙の単行本になり、発売後たちまち重版も決定した。

 主人公は23歳、新米会社員の美紗緒。本作では、一つ年上の職場の先輩、しかも彼女もちの市川に翻弄される彼女の恋を描き出すのだが、この男が、なんともいえないリアリティに溢れている。

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 入社当初は別の先輩に想いを寄せていた美紗緒。その気持ちを見透かし、ちょっかいをかけてくる市川のことは敬遠していたのだが、「おまえのことけっこー好き」なんてメールをもらって以来、ついつい意識してしまうように。またいつもの冗談に決まっている、なんて思ったときにはもう遅い。美紗緒の気持ちはどんどん彼に向いていく。ところがこの男、美紗緒との距離をじわじわ詰めながら、同時進行で彼女をつくっていたのだ――。

 市川に翻弄されて、小さなことで幸せの絶頂から絶望までを往復し続ける美紗緒が不憫すぎて、正直読むのがつらい。だけど、自分にだけ素の顔を見せてくれるし、甘えてくる、そんなことされたら離れられないという気持ちもわかりすぎるほどよくわかる。こうなれば、もはや中毒。どんなに苦しくても、恋人の存在がちらついても、一度手に入れてしまったぬくもりを手放すことなんてできるはずがない。

 そして実は、ワルい男のほうにも、純粋な恋心を信じられない理由があった――。大学時代に経験した、ある女性との恋愛から、市川は感情的な女を嫌い、異性が自分に向ける好意も信じきれない。

 スペックだけで恋人を選び、美紗緒に駆け引きを仕掛けては悦に入る。この男、最初はとにかくイライラする。しかし、美紗緒への気持ちを自覚してからは、自分のしてきた選択に自ら苦しむはめになる。自業自得……と切り捨てるのは簡単だが、その傷ついた心の右往左往が“市川視点”で語られるために憎み切れない。こうして、男女両者からの目線で交互に物語が進んでいくのが、このマンガの凄いところなのだ。

 やがて、美紗緒の存在に勘づいた市川の彼女は地雷化していき、なかなか美紗緒と市川の距離は縮まらない。市川は、どうけじめをつけるつもり? 美紗緒に明るい未来は訪れるの? と、やきもきさせられ続けられる本作だが、正論だけで割り切れないのがオトナの恋というもの。タイミングですれ違う、想い通りにならない、一度でもそんな恋をしたことのある女性は共感必至。美紗緒に自らの想いを重ね、その恋が成就することを願わずにはいられないはずだ。今まさにズルい男に翻弄されている人も、ときめきを忘れかけている人も、本書を読んで恋愛の渦に巻き込まれていただきたい。

文=立花もも