「これは、ただの“泣ける犬の物語”ではない」モニター読者も大絶賛の半自伝的小説がついに日本上陸!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

『おやすみ、リリー』(スティーヴン・ローリー:著、越前敏弥:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)

ある日、愛犬リリーの頭に張りついていた奇妙な“タコ”。それは“ぼく”とリリーの平穏な日常に終わりを告げる、残酷な闖入者だった。愛犬との闘病という苦しみを経て、みずからの人生を力強く再生していく、ちょっとヘタレな男の半自伝的小説『おやすみ、リリー』(スティーヴン・ローリー:著、越前敏弥:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)。デビュー作にして100万ドル近い契約で出版が決まったという、アメリカやロンドンで話題の本作がついに邦訳決定した。

翻訳者の越前敏弥さんも思わず涙したというが、「犬も猫も飼ったことのない自分がそんなふうになるなんて」と驚きを示しているとおり、本作はいわゆる、泣ける感動作品とは毛色がちがう。

まず、リリーは“ぼく”に語りかける。そして彼女の頭にできた“タコ”も、どうにかして退治しようと奮闘する“ぼく”を嘲笑うように、頻繁に言葉を発する。物語はこの3人を中心に、ややファンタジックに展開していくのだが、この会話が妙にユーモラスで、滑稽で、思わず笑ってしまう。その日常にあふれた笑いの狭間に、愛する者を失う耐えがたい苦しみと、それを乗り越えようとする男の勇気が溢れているのだ。

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越前さんだけではない。事前に募ったモニター読者からの感想にも、同様の想いが多く綴られていた。ここにその一部をご紹介しよう。

これは、ただの「泣けるペットストーリー」ではない。泣いて泣いて、その先に見えるのは、とても硬質で生々しい人生の本質だ。中村久里子

多くの人に勧めたい、と心から思った。かつての僕のように、「愛犬家の、愛犬家による、愛犬家のための物語か」と一読を止めようとする人に、特に。
なぜならこの本は、生きることのかなしさと、同時にもたらされるよろこびの両方から目をそらすことなく描ききろうとしているからである。岩川雄洋

誰しも覚えのある、何かをなくす痛み、悲しみに直面し、必死に向き合う話。それは自分と向き合うということでもあって、読んでいて心が痛く、つらくなるところもありました。読み切れるかな、と思いましたが、ちゃんと最後まで読んでよかった。パンドラの箱のように希望の残る物語でした。マル

人生には理不尽なこと、つらいことがあって、なかなか思った通りにはいかないけれど、たまにあるかけがえのない出会いが輝きをもたらしてくれる。「生きることこそほんとうの冒険」なんだと思わせてくれる、すがすがしい読後感のある一冊。ハルート

老犬を見送ったことのある大多数の人が、この本を読むといろいろな「あの日」「あの顔」「あの時間」を思い出すでしょう。目の上の「タコ」、そうとしか表現したくない気持ちも、すぐに気づけなかった後悔も、同様の苦しさをきっと多くの人が持っている。だけどたしかに、とても素敵な時間を共に過ごせたこと、その幸せをも思い出させてくれる本でした。aris

4年前に亡くなった母を思いながら、私なりにおやすみを言いました。家族になること、生活すること、年をとること、選ぶこと、選べないこと。くよくよしがちな毎日に、リリーの言葉が沁みます。
「ひとつきで! じゅうぶん! かなしむのは!」すずきムニエル

※敬称略

モニター読者100名から「単なる感動モノとして売り出さないでほしい」「正しく本作の魅力を伝えてほしい」という感想が多く寄せられたように、この本を読んだ後は、必ず誰かに語りたくなる。喪失を通じ癒やしと再生、ほんとうに大切なものを教えてくれる物語を一人でも多くの人に読んでいただきたい。

文=立花もも

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愛犬の頭に「タコ」が……。いずれ消えてしまう命が、ぼくに教えてくれたこと