おいしく食べてやせる、新ダイエット! 味覚を大事にする者はダイエットをも制す

健康・美容

公開日:2017/4/24

『やせる味覚の作り方』(小倉朋子/文響社)

 ダイエットを成功させるためには、ある程度の食事制限はつきもの。揚げ物や菓子パン、スイーツを大量に食べながら痩せるのは(一部の特殊体質の人を除いて)難しい。一方、「これだったら、食べ過ぎなければ痩せるよね」というヘルシーな食事も存在する。脂肪分の少ない肉類や魚、豆製品、そしてたっぷりの野菜…いわゆる健康的で、バランスのよい食生活というやつだ。

 問題はこうしたダイエット的に正しい食事を続けるのは、意外に大変だということ。本当はジューシーな霜降り肉が食べたいのに、「ダイエットのために」と蒸した鶏ササミを食べる。付け合わせはフライドポテトじゃなくて、刻んだキャベツと温野菜。しかも大好きなマヨネーズをかけるのは我慢して、ノンオイルドレッシング(もしくはアマニ油などの身体に良さそうなオイルと岩塩)を使う。短期集中型のダイエットならまだしも、「こんな食事を一生続けるのは耐えられない」という人もいるのではないか。そういう人が我慢に我慢を重ねて、無理やりヘルシーな食生活を続けたらどうなるか。どこかの時点で耐えられなくなり、食欲が暴発してしまう可能性が高い。

本書『やせる味覚の作り方』(小倉朋子/文響社)の著者もこう言っている。

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今まで築いてきた食習慣を完全にやめないといけないダイエットは、よほど意志が強くなければ失敗します。

 おいしいものをおいしく食べて、無理なく痩せる。これがベストである。そこで著者が提唱するのが、自分の味覚そのものを作り変えること。甘いものやこってりしたものがおいしく感じられるのは、人間の生き物としての本能だ。しかしこうした太りやすい食べ物だけでなく、ヘルシーな食べ物をも本気でおいしいと思えたら、ダイエットは苦行ではなくなる。

 おいしいものは、糖分や脂肪分の多いもの、しょっぱいものとは限らない。たとえば野菜には野菜特有の、うまみがある。ダイエット向きといわれる食材に秘められた「うまみ」に気づければ、毎日の食事はより豊かなものになるし、栄養のバランスも自然に整ってくるだろう。そこで大切になってくるのが、味覚の幅だ。味覚の幅が広がれば、甘みや脂のうまみ以外のおいしさがわかってくる。これこそが著者のいう「やせる味覚」の正体だ。

 そこで著者は五感をフルに使って食材を味わうことを勧める。食べ物の味の良し悪しを判断しているのは舌(味覚)だけではない。味覚以外の、見た目、食感、音、香りもおいしさを左右する重要な要素だ。著者曰く、この五感を使った食べ方ができないと、味覚の幅が狭くなってしまうらしい。

わかりやすく脳が喜ぶ脂肪分の多い食べ物、甘い食べ物ばかりを欲するようになるのです。

 だらだら間食してしまう人、昨日の食事の内容を思い出せない人など、意識しないでモノを食べている人には、この五感が鈍っている傾向があるそうだ。

 五感を使って食べる能力をアップさせるためには、「食リポ」をしながら食べるのが有効だという。グルメ番組のリポーターのように、食材の食感や香りなどを言葉にする作業を習慣化していくと、どんどん味覚が研ぎ澄まされていくらしい。それこそ生野菜を何もつけないで食べても、素材そのものが持つ繊細なうまみが感じられるようになる。

 幸いなことに努力次第で、味覚は変えることができる。それは丁寧な食生活を送る能力を身につけることであり、本当においしいものを知る食の達人に近づくことでもある。本書は一応ダイエット本ということにはなっているが、ストイックなダイエッターではなく、むしろ食べること大好きな食いしん坊こそ楽しめる1冊だ。

 旬のものの味を知る、その時の自分の体が欲する食べ物をオヤツにする、など、著者のアドバイスには食べることへの愛情や喜びがあふれている。普段何気なく口にしがちなものではあるが、野菜や調味料、肉類、魚介類など食材のもつ「おいしさ」の世界は私たちが思っているよりずっと広い。心の底から「おいしい」と感じ、食を楽しむことはダイエットの敵ではない。真の食通を目指しながら、スマートな体を目指すことは決して矛盾ではないのだ。

文=遠野莉子