JALの定時到着率は世界一! 経営破たんからの再生も、全ては利用者の信頼があってこそ

ビジネス

2017/4/26

『JALの謎とふしぎ』(秋本俊二:監修、造事務所:編/PHP研究所)

 先日テレビを見ていたら「JAL路線開設制限終了─羽田~NY線就航」とのニュースが流れた。JALは2010年1月19日に経営破たんしたが、2012年9月19日に再上場を果たし、新生「日本航空株式会社」として復活している。しかし、その間に企業再生支援機構から3500億円にも上る出資を受けるなどの公的支援を受けていたため、この5年間は新規路線開業を事実上制限されていたのだ。

 再上場の時点で通常経営に戻ったと思い込んでいた小生だが、このニュースを見てから急にJALのことが気になりだした。株式上場や経営再建の仕組みなどがわからないかと調べるうち、この1冊に出合う。『JALの謎とふしぎ』(秋本俊二:監修、造事務所:編/PHP研究所)だ。

 本書は「ボーイング787」をはじめとする現行機体の数々や女性客室乗務員の歴代制服などがグラフィカルに紹介されており、ついついそこに目が行くが、勿論それだけではない。機内食の開発秘話や普段は意識しない地上スタッフの仕事内容、機体整備の秘訣、さらにはお得な運賃設定の案内などもあり、ただ利用するだけでは気付かなかったJALの利便性と快適性を支える秘密が手に取るようにわかる。

 小生が個人的に気になっていた経営破たんからの素早い再生に関しては、こんなデータが掲載されている。世界の航空データを分析収集する米国「FlightStats」社の発表した「定時到着率」で2015年の国際線・国内線を合わせた運航実績において、JALは世界第1位。さらにサービス産業生産性協議会による2016年度のJCSI(日本版顧客満足度指数)調査結果で国際線の順位でも、乗客の再利用意向と他社推奨意向において1位を獲得。顧客満足度でも2位なのだ。

 JAL公式サイトを見ると、「定時到着率」での表彰は経営破たんした2010年にも受賞。その後も、2012年から今年まで5年連続受賞している。一度経営破たんした企業なのに、この高評価はなぜだろうか。本書を読みすすめるうちに、JALの再生は設立以来築き上げてきた、顧客サービスの信頼性からではないかと思うようになってきた。

 JALの発足は1951年8月1日にさかのぼる。終戦以降、GHQ(連合国軍総司令部)により日本の民間航空活動は全面的に禁止されていたが、1950年にようやく許可がおりたのだ。意外にも当初は飛行機とパイロットをリースでまかなっていたという。しかし、客室乗務員は最初から日本人女性を自社で採用。JALの「スチュワーデス1期生」として15名が活躍したのだ。戦前にも女性客室乗務員は存在していたが、戦後はJALから始まる。

 戦後の機内サービスを切り拓いてきたJALだけに、そのサービスは他社よりも上質なものを目指した。そのために乗客が「本当に求めていることは何か」をいち早く察知し、柔軟な対応や行動につなげる「感知力」を高めることに日頃から努めているのだ。それは地上勤務のグランドスタッフや整備士たちも同様で、空港での乗客への対応、機体の安全性、心地良い座席や美味しい機内食に至るまでの、徹底的な気配りはその賜物である。

 経営破たんも単純な乗客離れからではなく、赤字路線からの撤退が遅れたことも要因とされており、それも顧客サービスにこだわったゆえではないだろうか。迅速な経営再建も利用者からの信頼があるからこそ可能だったのだ。先述の「定時到着率」にしても、経営陣が号令するだけでは達成できない。各現場スタッフが密に連絡を取りフォローしあい、また混雑時には乗客の協力も必要だ。当然スタッフへの信頼がなければ、乗客も動いてくれないだろう。結局、どんな業界も相手への心遣いが信頼の基本。小生自身も信頼を得るためには、弛まぬ努力が必要だ。

文=犬山しんのすけ