「友達以上、不倫未満」は”挿入”なし、浮気ではない? 配偶者よりも強い絆で結ばれた「セカパ」とは?

恋愛・結婚

更新日:2017/5/15

『友達以上、不倫未満(朝日新書)』(秋山謙一郎/朝日新聞出版)

 セカンドパートナー(以下セカパ)とは、既婚者同士でありながら、深い絆で繋がる配偶者以外の異性を指す。それを「不倫相手」と呼ばないのは、肉体関係の一切ないプラトニックな関係から。『友達以上、不倫未満(朝日新書)』(秋山謙一郎/朝日新聞出版)は、セカパを持つ男女の赤裸々な実態を取材したルポルタージュだ。

 夫と二人暮らしのミナミさん(42)は、週末をセカパの男性と過ごす。彼は単身赴任中で妻とは別居、ミナミさんはSNS友達だった。

 食事や買い物に行き、お互いの配偶者の相談をすることさえある。もちろん一夜も共にするが、二組の布団には別々に眠る。

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「夫を裏切るようなことはしませんし、できません」

 2人の間に、男女関係はない。それどころか、彼の存在は夫「公認」。理解しがたい状況だが、セカパを互いの配偶者が知っているケースは多い。

 セカパを持ったきっかけは、「週末くらいひとりでいたい」という夫の一言。単身赴任中で「ひとりが辛い」とつぶやいたセカパの彼とは、自然な流れで今の関係になった。彼のおかげで夫婦に生まれた距離感が心地よい、というミナミさん。あくまで夫のため、という前提がやましいこと抜きで堂々と関係を築ける理由なのかもしれない。

 とはいえ、セカパに性的要素は一切ないかというとそうでもない。

 SM嗜好を持つアイコさん(43)は、若い頃Mとして調教された快感が今も忘れられない。だが、軽蔑や離婚を恐れて、性的にノーマルな夫には言えずにいた。そんな時、ネットで「挿入を目的とするSMは、SMとはいわない」という男性の書き込みに目を奪われた。

 すぐ連絡を取り、彼はセカパであり“ご主人様”になった。もちろんセックスはなし。するのはセクシュアルな要素を含んだごっこ遊びだ。

 彼に夫の愚痴をこぼせば、「お前は夫への感謝がない」と容赦なく“お仕置き”される。

「“ご主人様”である彼のアシストがあるからこそ夫婦仲も円満です」

 と語るアイコさんにとって、彼は自分を導き、ありのままを受け止めてくれる存在。彼がいるからこそ、夫の前で素敵な自分でいられるのだという。

 特殊性癖が介在するセカパ関係は案外多いようだ。理由として本書では、SMやSW(夫婦交換)、ペッティングなどは、男性器を女性器に「挿入」すること、つまり法律上の「不貞行為」を第一目的としていない側面があるから、としている。

 もちろん、夫婦で楽しめればそれに越したことはないが、カミングアウトのハードルは高い。セカパという本当の自分をさらけ出せる場所を、あえて別に作ることも選択肢の一つだろう。

 本書のルポからは、意外にも「配偶者への思いやり」という共通点が見いだせる。あくまで妻や夫がファースト。二番手ではあるが、セカンドパートナーは夫婦生活の安定剤であり、ときにスパイスにもなる重要な役割を持つ。これから「不倫」にかわり、「セカパ」が浸透する時代がくるかもしれない。

文=吉田裕美