「悪い政治家を見抜く人狼ゲーム」?! 現役東大生のお笑い芸人が「政治」を楽しくわかりやすく教えてくれる新感覚の絵本

社会

公開日:2017/5/7

『政治の絵本 現役東大生のお笑い芸人が偏差値44の高校の投票率を84%にした授業』(たかまつなな/弘文堂)

 政治は難しい。中学・高校で公民として勉強しているのにわからないし、いざ一から勉強しようと思っても、難解な言葉の数々に悪戦苦闘。ついには「自分には関係ないもん!」と放り投げてしまう…。政治に対して、そんな苦手意識を持っている人は多いのではないだろうか。

 そんな「わかりにくい」「つまらない」政治の世界を「わかりやすく」「楽しい」ものとして紹介してくれるのが『政治の絵本 現役東大生のお笑い芸人が偏差値44の高校の投票率を84%にした授業』(たかまつなな/弘文堂)。著者はお笑い芸人でありながら、慶應大学・東京大学の現役大学院生、さらに政治の面白さを伝える「株式会社笑下村塾」の代表取締役という、たかまつなな氏だ。異色の経歴の持ち主だが「お笑い界の池上彰」を夢に掲げるだけあって、本書のわかりやすさはピカイチ。イラストも豊富なので、中高生が勉強として読むだけでなく、政治分野を学び直したい大人向け入門書としてもぴったりだ。

 そして本書が最も優れているのが「受け身にならない」ことだろう。本を通しての勉強というのはどうしても内容を頭にインプットすることがメインとなる。しかし、本書は「逆転投票シミュレーション」「悪い政治家を見抜く人狼ゲーム」といった参加型ゲームで楽しみながらのアウトプットが可能だ。

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 例えば、中高生に「選挙に行かないと損をしてしまう」ということをどうやって伝えるだろうか。私は説得力をもって伝える自信が全くない。きっと私のような大人は少なくないはず。説明ができないということは、選挙の実態をきちんと理解できていないということ。先ほど紹介した「逆転投票シミュレーション」はまさに、選挙に行かないとなぜ損をしてしまうのか、ということを実体験できるツールとなっている。簡単に説明すると、“人口比”だけで選挙を行えば、若者世代の意見は通りやすい。しかし、“投票率”を加味すると若者世代・高齢世代の間で逆転現象が起こり、高齢世代の意見が通りやすくなってしまうというもの。実際に選挙に行かないという人には「自分が行っても何も変わらない」と考える人もいるという。そんな理由で投票しない人たちが選挙に行くようになったら…日本が大きく変わるかもしれない。

 他にも「1分でわかる日本の課題」ということで、原発の可否・消費税・年金制度など世の大人たちが頭を抱える10の問題が解説されている。全ての問題に賛成意見と反対意見が記載されており、どんな意見で対立しているのか、自分だったらこういう理由で〇〇に賛成・反対と考えることができるので論点整理に便利なコーナーだ。

 ニュース・国会中継を見ても、やっぱり取っつきにくい政治。そんな政治を知る・興味を持つきっかけに、こんな本を中学・高校の教科書に! いや副教材でもいいから取り入れてみれば、政治に興味を持つ若者が増えそうなものだが…いかがだろうか。

文=冴島友貴