“平均的”なサラリーマンが慕われる秘訣

ビジネス

公開日:2017/5/12

『平均的サラリーマンの最強の生き方 なぜかうまくいってる人が大切にしている7つのこと』(チーム安部礼司+TOKYO FM/マガジンハウス)

 日曜日の黄昏時、小生が毎週のように聴いているラジオ番組がある。17時からTOKYO FMをはじめとするJFN37局ネットで放送中のラジオドラマ『NISSAN あ、安部礼司~BEYOND THE AVERAGE~』だ。そのリスナーは180万人にも及び、読者諸氏の中にもファンがいるのでは。ごく普通のあくまで平均的(アベレージ)なサラリーマンである主人公「安部礼司(あべれいじ)」と、彼を取り巻く人間模様を描いたコメディで、「鼻歌みたいな応援歌」をキャッチフレーズとするほど肩の力が抜けている。しかし、放送12年目に突入する人気の、そして心に染み入る番組なのだ。

 なぜ、どこにでもいそうなサラリーマンを主人公とした物語が染み入るのだろう。容姿も力量も人並みなのだが、物語の中で彼は驚くほどに周囲から慕われている。その秘訣は、彼の生きかたにあった。それをまとめた1冊が、『平均的サラリーマンの最強の生き方 なぜかうまくいってる人が大切にしている7つのこと』(チーム安部礼司+TOKYO FM/マガジンハウス)だ。

 安部礼司が慕われる理由、本書内ではそれを彼自身が「大切にしている7つのこと」として紹介している。

advertisement

1・心底慕ってくれる後輩!
2・なぜか目を掛けてくれる上司!
3・同僚たちとの他愛もない会話!
4・なんでも言い合える仲間!
5・適度な頑張り!
6・気持ちの持ちよう!
7・やっぱりラブ!

 これら7つのことはいつもドラマ内にちりばめられていて、物語の基礎となっている。それを基に彼を中心とした登場人物たちが、不器用ながらも前向きに行動していく姿に、リスナーは共感し引き込まれていくのだ。

 基本的にゆる~い番組で、本書もそれを踏襲してゆる~い作りになっている。先日4月16日に物語の舞台となる都内千代田区神田神保町で、先行発売イベントと番組内での生中継が行なわれたのだが、その中で本書を「中身がビックリするぐらい難しくない」などとアピールする始末。本当にそれで良いのかと思ってしまうが、それこそが番組と本書の趣旨なのだから良いのだろう。小生もそこに惹かれているのだし。

 実際、本書を開くと見開きに大きめの文字で「7つのこと」の各具体例を1つ1つ紹介。どのページもドラマ内での会話のごとく軽妙な文章で書かれており、まさに鼻歌のようにさらりと入ってくる。例えば【できないスキルを要求されても、聞き流して自分流】や【好きな分野をちゃっかり仕事にくっつける】などの項目は個人的にとても共感してしまう。これらは「適度な頑張り!」の章にある言葉で、都合の良い話だと思うかもしれないが、無理をしない等身大の頑張りと、仕事を楽しむ姿勢こそがモチベーションの持続につながるのではないだろうか。

 番組も今年4月で12年目に突入したのだが、この間にはたびたび公開放送も行なわれており、また地方での収録も少なくない。これは番組がリスナーを大切にしていることの表れだ。安部の「大切にしている7つのこと」も、結局はこうした「人との縁」が根本ではないだろうか。その縁があるからこそ、互いに助け合うことができるのだと思う。

 これだけの放映期間に、登場人物の出会いや別れ、結婚出産、子供の成長などさまざまな物語があったものの、あくまで「鼻歌みたいな応援歌」を送り続けている安部礼司。リスナーは勿論、番組を聴いたことがない人でも、本書は良き応援歌になるはず。あとがきにもあるが、その生きかたを真似ようとする必要はなく、ただ我が身を振り返ればよい。「自身の平均、平凡、まわりを色眼鏡で見なかったあの頃」を思い出しその時の気持ちになれば、自然と安部礼司的生きかたができるだろう。

文=犬山しんのすけ