無抵抗な“サンドバッグ”になってない? ツライ人間関係から逃れるには!?

人間関係

更新日:2017/5/12

『賢く「言い返す」技術』(片田珠美/三笠書房)

 就職、異動、転職などで、働く環境がガラリと変わった人も多いはず。相変わらず、イヤミな上司や気の合わない同僚・後輩に付き合っているという人もいるだろう。

  そんな人生を一歩前進したいときには、『賢く「言い返す」技術』(片田珠美/三笠書房)だ。本書では、職場の難しい上下関係から、やっかいな友人・グループづきあい、さらには、家族・パートナーまで、言われっぱなしじゃなく、賢く言い返して、ツライ人間関係を繰り返さない方法を伝授する。

 著者の片田氏は、精神科医として、難しい現代の対人関係からくる悩みや心の病を抱えた人々に、日々向き合う臨床実績に定評があり、ベストセラーに『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)などがある。

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そんな著者が、声を大にして訴えたいことは、
「攻撃に対して、無抵抗でいてはいけない」ということ。「いざというときは、どうか迷わず“自分の心を守る”ほうの道を選んでほしい」と、真摯に伝えている。

 そこで今回は、本書の内容から一部まとめてご紹介したい。

“期待通りの反応”を見せてはダメ!

 攻撃される側よりも、攻撃する人ほど、恐れ、不安を抱いており、弱い面があるという。戦いの基本は、まず相手の心理を知ることから。

 攻撃的な人は、以下8つのタイプのうちどれかに該当し、複数を同時という場合も。

(1)支配したい、思い通りにさせたい「王様」
(2)自分を認めさせたい「裸の王様」
(3)負けたくない、うらやましい「羨望」
(4)何でも思い通りにならないとイヤ「お子ちゃま」
(5)私はかわいそうな人なの「悲劇のヒロイン」
(6)誰かに当たらずにはいられない「置き換え」
(7)傷つけるのが快感「サディスト」

 また、彼らは“攻撃が届いたかどうか”を確認したがるそうだ。だからできるだけ、“期待通りの反応”を見せないようにしたい。

 詩人の寺山修司は、「醒めて、怒れ」と書いているそうだ。あくまでもクールに、“醒めて怒る、醒めて言い返す”。攻撃を受けたからといっても、相手と同じ土俵に立ってはならない。

相手と自分の間にはっきり“境界線”を引く

 攻撃を受けたとき、「自分のせいだ」「自分が悪い」と思わないほうがいい。相手は「あなたが悪いんだ。あなたにこういう悪いところがあるから、私はあなたを叱ったり、机をバーンと叩いたりしているんだ」と、罪悪感を与えるような言い方をする。しかしそれは向こうの戦略だ。

 大切なところで間違えたなら、反省して直すべきだが、向こうは、欲求不満やストレスをぶつけているかもしれない。攻撃的な人と向き合う際には、「相手と自分の感情に境界線を引く」ことが大事だ。“相手の感情と私の感情は違う。相手と私は別の人間”であることを忘れないように。

「ショックを抑えられない…」ときは?

 もし感情が出てしまったら、顔をあげて相手を正面から見据えること。泣きながらでも、硬直して何も言えなくても、相手の目をじっと見つめ返す。「こんなことぐらいでは、逃げません」という意思表示を。そして心が落ち着いてから、“賢く「言い返す」”。

 ガンガン攻撃されても、心の中で「場数を踏んでいる」と自分に言い聞かせるのも大切だ。「“場数ポイント”を100個貯めれば無敵になれる」と心の中でつぶやき、経験を積むことができたと思えばいい。

時には「性善説」を捨てて考える

「世の中には“性善説”には当てはまらない、攻撃的で、他者の痛みを想像できない人物が確かに存在する」そうだ。へりくだった態度や礼儀正しい対応を示したら、相手が変わるなんて期待しないほうがいい。

 たとえば、「サディスト」は、攻撃に対して無抵抗で、反撃しない「いい人」を狙って攻撃してくる。一度ターゲットになると、都合の良い“サンドバッグ”に…。その結果、フラストレーションをため込み、心身の不調を訴えるようになった人に、著者は精神科医として、日々接しているそうだ。

 本書では、29つのケースを紹介している。たとえば、
・いやみ:「オウム返し」作戦で、戸惑わせる →「△△とは、どういうことですか?」
・あからさまなライバル意識:“ほめ返し”で煙に巻く →「お忙しそうで大変ですね!」
・憂うつをばらまく:“構ってほしがる相手”には、構ってやらない →「(心の中で)悲劇のヒロインになりたいなら、どうぞご勝手に」
など。

 そのほか、難癖をつけられる、すぐに感情的になる上司、母のきつい言葉など、困った人間関係のあるあるを、具体例でわかりやすく解説し、解決策を見出してくれて、心強い内容になっている。実践するのは勇気がいる。でも、自分の人生は自分で守らなきゃならないのだ。私はこの本に出会えて、少し大人になれたような気がした。

文=Sachiko