日本の「あのドラマ」にも影響を与えた、半世紀前の伝説的な2つの怪奇ドラマを徹底解説!!

エンタメ

2017/5/16

『世にも不思議な怪奇ドラマの世界』(山本 弘/洋泉社)

 タモリがストーリーテラーを務めるフジテレビの人気番組『世にも奇妙な物語』には、何度か盗作疑惑が持ち上がったことがある。しかし、著作権法によれば著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されており、アイデアやコンセプトは含まれないと解釈されるため、単純に盗作とは云えない。

 そもそも『世にも奇妙な物語』のコンセプトに似たテレビ番組は、半世紀以上も前にアメリカで制作されている。『Alcoa Presents: One Step Beyond』と『The Twilight Zone』という作品がそれで、前者を『世にも不思議な物語』という邦題で、後者は『ミステリー・ゾーン』というタイトルで記憶している人もいるだろう。

世にも不思議な怪奇ドラマの世界』(山本 弘/洋泉社)は、優秀なSF作品に贈られる星雲賞の受賞歴をもつ著者が、その両作品を徹底解説する、作品への愛が詰まった一冊である。

 本書によれば、『世にも不思議な物語』はアメリカで1959年1月に放送が開始され、同年の10月に『ミステリー・ゾーン』が続いたそうだ。『世にも不思議な物語』で毎回、番組冒頭にディレクターが案内役を務めるスタイルは、作品のコンセプトである「実際にあった出来事の再現」を強調するためらしく、タモリもこのスタイルを踏襲している。ただし、タモリの番組のコンセプトは、ファンタジー色の強かった『ミステリー・ゾーン』に近いと著者は解説していて、ファンタジーめいた内容にした理由は、50年代後半からアメリカでは番組への干渉が厳しくなり、人種問題や政治問題といったテーマをテレビで扱いにくくなってきたことから、検閲を避けるためであったようだ。本書では言及されていないが、『世にも不思議な物語』の方は「基本的に勧善懲悪のスタンスで作られた番組」と著者が述べている点からして、同様に当時のアメリカの世相が反映されていたと思われる。

 そして両作品の日本放送時における評判は、あまり芳しくなかったようだ。というのも、『世にも不思議な物語』はその前に原題に近い『ワンステップ・ビヨンド』というタイトルで放送されていたのが変更になったもので、さらに新作の契約時には『これは実話?です』と改題されており、著者は「人気があった番組ならタイトルを変える必要もなかろう」と指摘している。また『ミステリー・ゾーン』の方も、先に『未知の世界』のタイトルで放送されたのちに改題されたもので、再放送されたさいには『あなたは信じますか』というタイトルになっていたため著者は、ファンだとしてもテレビ欄しか見ていなければ「これが『ミステリー・ゾーン』だと気づかなかった人も多かったのではないだろうか」と述べている。

 しかし、『ミステリー・ゾーン』が日本のクリエイターにもたらした影響は、決して小さくはなかった。特に著者は『ウルトラQ』を例に挙げ、連続ドラマでなく異なる物語を集めた番組構成や、初期に作られた作品に「怪獣らしい怪獣の出てくる話が少ない」SF作品が多いこと、そして同番組内のナレーションに出てくる「アンバランス・ゾーン」という言葉などを、『ミステリー・ゾーン』からヒントを得たのだろうと推測し、「その後の『ウルトラマン』もなかったかもしれない」と、その重要性を強調していた。

 本書では、『ミステリー・ゾーン』自体にも先行する作品群と類似する剽窃疑惑があったことに触れており、著者が「使い古されたオチでも、使い方しだいなのである」と擁護しているのには、私も賛同したい。なにしろ、大抵の物語は神話や古典に行き着いてしまうのだから。両作品の全エピソードの解説と併せ、元ネタの紹介や『ミステリー・ゾーン』の未訳短編(尾之上浩司・訳)なども載っていて、映像作品を未見の人が読んでも面白く読める本書は、厚いページ数にギッシリ詰まった情報量の多さからしても、著者の作品への愛が重い一冊である。

文=清水銀嶺