イケメンエリートだけれど人間失格? 知られざる日本の文豪たちのダメ男な素顔

文芸・カルチャー

2017/5/17

『文豪図鑑 完全版 あの文豪の素顔がすべてわかる』(開発社:編集/自由国民社)

いま文豪ブームがきています。文豪をイケメン化したアニメやゲームの影響で古典文学に興味を持つ若い女性が増えていて、アニメとコラボした新装版の小説は書店でも売り上げを伸ばしているそうです。

文豪というと歴史に名を残した偉人というイメージですが、実際にはどんな人物だったのかご存じでしょうか。『文豪図鑑 完全版 あの文豪の素顔がすべてわかる』(開発社:編集/自由国民社)では、人気イラストレーターによる美麗なイラストと共に、明治・大正・昭和で活躍した50人の文豪のプロフィールと代表作を紹介し、その素顔に迫っています。

そこには文壇で賞賛を浴びながらも、私生活ではロクでもない男たちの型破りな人生が見えてきます。

■文豪は女癖が悪かった~島崎藤村、谷崎潤一郎、佐藤春夫~

文豪たちのダメなところを挙げるとすれば、まず派手な女性遍歴です。1度や2度の離婚歴は当たり前、人妻と不倫をしたり、愛人を作ったりと自由奔放。その元祖といえば、明治の恋愛至上主義者・島崎藤村。明治女学校で教鞭を執っていた彼は、教師でありながら教え子に恋し、辞職。その後、2度の結婚をしながら40歳のときに20歳の姪のこま子を妊娠させてしまいます。それだけでも破廉恥ですが、妊娠が発覚するやいなやフランスに逃げて5年間も帰国しなかったというからとんでもない無責任男です。

谷崎潤一郎と妻・石川千代、同じく文士で友人だった佐藤春夫との三角関係もスキャンダラスです。潤一郎は妻に冷たい夫で、千代に同情した春夫はやがて恋心を抱きます。それに気づいた潤一郎は、妻を春夫に譲る約束をするのですが、すぐに反故にします。それに春夫が怒り、当時の新聞に載るほどの騒動となったとか。やがて両者は和解して、千代は春夫に譲られたそうですが、犬や猫の子ではないのですから、奥さんを気軽にあげたりもらったりしてはダメでしょう。

■文豪はお金もなかった~石川啄木~

金銭感覚や生活能力が欠如している方も多かったようです。文豪の借金王といえば、石川啄木です。文士を目指した啄木の生活は清貧なものだったと言われてきましたが、近年、その貧しさの原因が浪費癖となまけ癖にあったとわかってきました。19歳で結婚しながらも東京で複数の芸者と交際し、仕事はしばしば無断欠勤、案の定、生活に困って知人や友人から借金を重ね、その総額は1372円、現在に換算して約1400万円にもなったというから呆れてしまいます。

■文豪は情緒が不安定だった~夏目漱石、芥川龍之介、太宰治~

文豪たちの大半は気むずかし屋で神経質な変わり者でした。そのなかでも睡眠障害や自殺未遂を繰り返していた神経衰弱トップスリーといえば夏目漱石、芥川龍之介、太宰治です。夏目漱石と芥川龍之介は言わずと知れた師匠と弟子の関係です。そして太宰治は熱狂的な芥川ファンで、ノートに芥川龍之介の名前を書き連ねたり、顎に手をやる芥川ポーズで写真を撮ったり、芥川賞に落選した際には選考委員の川端康成を批判したりとなかなかの問題児だったとか。もしかすると文豪というのは代を重ねてダメ男のDNAが受け継がれているのでしょうか。

本書で紹介されている文豪たちの経歴をみると、実家が大富豪であったり、東京帝大といった名門大学に在籍していたり、政府の官僚として働いていたりと、皆さんエリート層で女性にもモテる勝ち組なのに、揃って身を持ち崩す方ばかりなのは、これが作家の性というものなのでしょうか。

しかし彼らは偉人として歴史に名を刻んでやろうというつもりはなく、ただ己の恋や信念を貫いて思うままにそれぞれの人生を謳歌していたのでしょう。そうした世間体を気にしない、人間味にあふれた自由な生き様に私たち現代人は憧れるのかもしれません。

文=愛咲優詩