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福知山市動物園のウリ坊とみわちゃんが…新感覚西遊記『トリピタカ・トリニーク』

『トリピタカ・トリニーク』の販促ポスターには福知山市動物園のウリ坊とみわちゃんが

 「こうして私は旅に出た」――その言葉とともに草むらを駆けるイノシシと、その背に乗った猿。福知山市動物園のウリ坊とみわちゃんだ。だが、動物園の広報ではない。『神様はじめました』の鈴木ジュリエッタが送る最新作『トリピタカ・トリニーク』(白泉社)の販促ポスターだ。いくら猪突猛進で猿みたいなおてんばが主人公の“少女西遊記”だからって……。『ガラスの仮面』にマツコ・デラックス、『スキップ・ビート』にROLLYなど、攻めのポスターを数々披露してきた白泉社ならではの試みである。嫌いじゃない。むしろそれでこそ白泉社。

 と、ポスターにすべてを持っていかれそうになるが、肝心の作品ももちろん負けていない。読みはじめてまず、驚いた。これまで『西遊記』をモチーフにしたフィクションは数多あったが、三蔵法師というキャラクターをこうも大胆に、斬新にアレンジするものか、と。三蔵法師といえば、やんちゃな孫悟空を法力でこらしめるイメージなのに、本作ではむしろその逆。暴れん坊のオレ様男が、猪突猛進で純粋な少女・花果(かか)にほだされていく様が描かれていく。そもそもこの三蔵、今のところまっとうな人間でさえない。花果の師匠・玄奘法師が妖魔に殺された隙をついて、その身体を奪ってしまった。さらに三蔵というのも偽名。つまり“中”にいる男は三蔵でもなければ法師でもないのだ。しかもどうやら、次々と襲いかかってくる妖魔はこの男の命を狙っているらしい。世を混沌におとしめている皇帝を倒しに都をめざす、と言っているからには悪党ではないのだろうが、傍若無人なふるまいは、一概に善人とも言いがたい。彼はいったい何者なのか? 妖魔と戦うシーンは迫力満点だし、つかみでかなりわくわくさせられる。

 そして忘れてはならない、主人公・花果がとにかく健気でかわいらしいのである。生まれてすぐに山に捨てられ、あわや虎に襲われかけたところを玄奘法師に助けられた花果。見ず知らずの子供のために命を張った彼を師匠と慕い、病弱な彼を看病しながらともに暮らしてきた。都から村に流れてきた毒水の対処を嘆願するため、玄奘が花果を置いて旅立ったその夜、村が妖魔に襲われ、村人がみな猿に変えられてしまっても、うずくまって泣くのではなく、助けを求めに玄奘のもとへと山を駆けた。さらにはその玄奘が死んでしまっても、「目的を達すれば玄奘をよみがえらせる」という三蔵の言葉を信じて、ともに都をめざす。かわいいだけでなく、強い。それはただたくましいというだけではない。傍若無人に見えても、いつも自分を守ってくれる。国を救いたいという強い思いを秘めた彼の、真の優しさに気づくことのできる心の強さを持っている。その彼女の強さこそがおそらくは妖魔を倒すカギになるのだろうことは想像にかたくない。

 1巻のラストでは三蔵の正体が明かされるものの、それはあくまでも肩書の話。彼がどんな男なのかはわからないままだ。武人・河伯(偉そうに刀をふりかざすこにくたらしい男だが不思議と憎めない)やその兄(妙にクールで、名前もまだわからないのに惹きつけられる)の今後の役どころにも期待しつつ、2人とともに旅していきたい。

文=立花もも



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