「死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯生きてみるよ」 早逝の作家が遺した珠玉のラブストーリー

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

「ちゃんと生きて!」 死ぬと分かっている者にできるのは残された者への思いやりだった―。作家・小坂流加が遺した小説『余命10年』が、2017年5月15日(月)に発売された。

20歳の茉莉は、数万人に1人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが…。

同作の最初の刊行は2007年。それから10年目の今年2月、著者は文庫化への編集を終えるも発売を待つことなくこの世を去った。作品はフィクションだが、この事実と小説がリンクしているかのように感じられ「泣きながら読み終え、著者プロフィールを見て再び胸に迫るものがあった」という読者の声も届いている。

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「死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯生きてみるよ」各章の最後では主人公・茉莉の心の声が綴られる。ストレートなことばで気持ちの変化が描かれていることにも注目してほしい。

早逝の作家が紡いだ、涙よりせつないラブストーリー。著者の遺した言葉一つひとつに思いを馳せながら読み進めよう。

小坂流加(こさか・るか)
7月4日生まれ。静岡県三島市出身。第3回講談社ティーンズハート大賞で期待賞を受賞。本作の編集が終わった直後、病状が悪化。刊行を待つことなく、2017年2月逝去。

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