『枕草子』は気楽な日記などではなく政敵の書だった!? 清少納言の隠された“たくらみ”とは

社会

公開日:2017/5/31

 平安に暮らす女房の視線で、その日常を明るく軽やかに描いた随筆として有名な「枕草子」。じつは、この書は清少納言の気楽な日記などではなく、平安政治社会のなかで潰されずに生き抜くため、周到な戦略が練られた書だったという――。これまでの明るい清少納言のイメージを覆す、戦略家・清少納言の隠された“たくらみ”を解き明かすスリリングな一冊が、『枕草子のたくらみ』(山本淳子/朝日新聞出版)だ。

『枕草子』に描かれている清少納言の執筆の真意は、私的な日記を書くことではなく、“お仕えする中宮定子の御ため”その一点にあった。「生前は定子の心を慰めるため」「死後にはその鎮魂のため」「定子の遺した雅びな後宮文化が世から忘れられないため」に執筆したという。

 定子の死後、その敵方であった藤原道長の権勢極まる世で、目障りなはずの『枕草子』は潰されなかった。道長の娘で、生前の定子と中宮の座を分かち合った、いわば定子とライバルの関係にあったはずの彰子さえ、これを保護。定子の時代の香りに満ちた書が、なぜ平安社会に受け入れられたのだろうか? そこには清少納言の周到な戦略があった。紫式部が『紫式部日記』で、清少納言に対し「結局はありえない空言になってしまうでしょう」と辛辣な批判をしたが、その「空言」の真意はここにある。

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 同書には、平安文学研究者・山本淳子が『枕草子』を丹念にたどり、わかりやすい考察を掲載。清少納言のしたたかなたくらみ、平安の要(かなめ)たちの思惑を明らかにしている。スリルに満ちた『枕草子』の面白さを堪能しよう。

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