普段は見られない舞妓さんたちの日常とは?「まかないさん」の視点で描く花街グルメコミック【作ってみた!】

マンガ

更新日:2017/6/12

『舞妓さんちのまかないさん 1』(小山愛子/小学館)

 日本を訪れる外国人旅行者は増加傾向にあり、2016年には2400万人以上が訪日して過去最高を更新している。東京など観光都市は数多いが、京都もそのうちのひとつだ。昔の風情を残した町並みも魅力なのだが、やはり特筆すべきは「舞妓」の存在だろう。独特の日本髪と着物姿で花街(舞妓たちが主に活動する場所)をねり歩くその姿は、外国人にはさぞかし新鮮に映るはず。そんな舞妓さんたちも、「屋形」と呼ばれる自分たちが暮らしている家に帰れば、普通の女の子に戻る。『舞妓さんちのまかないさん 1』(小山愛子/小学館)では、屋形のまかないを担当するひとりの女の子の視点から、普段はあまり触れられない舞妓さんたちの日常を柔らかな雰囲気で描いている。

 主人公のキヨは幼馴染のすみれと一緒に、舞妓になるため青森から上京してきた16歳の少女。しかしおっとりとした性格が災いし、「おかあさん」と呼ばれる屋形の主から「おとめ」を言い渡される。「おとめ」とは、舞妓の修業を止められることで、早い話が「クビ宣告」。ところがキヨの暮らす屋形では「まかないさん」が辞めてしまっていて、舞妓さんたちの食生活は荒れ放題だった。青森に帰る直前のキヨが手近にあった食材で彼女たちの晩御飯を作ったことから、キヨはそのまま「まかないさん」として生活することになる。

 基本ストーリーとしては、キヨが日々、舞妓さんたちのために美味しい料理を作っていくもの。その中でさりげなく、舞妓さんの「普通の女の子」としての一面や、普段の生活などが描かれるのだ。例えば屋形ではたくさんの舞妓さんたちが生活しており、その中で自分の持ち物が勝手に使われたりして、結構モメたりするそうな。また彼女たちの日本髪は一度結ってしまうと、普段はそのまま過ごすことになるそうで、作中でも髪が崩れないように「高枕」という独特な枕を使って眠る姿が描かれている。やはり特殊な世界だけに、生活環境もかなり普通と違う部分があるということがよく分かる。

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 それでもキヨの作る料理は、いたって普通。朝食には焼きジャケや目玉焼き、お昼は親子丼、夕食はハンバーグなど、それこそどこの食卓にも並ぶメニューばかりだ。ただし舞妓さんの紅が落ちないように、おにぎりはひと口サイズにしてあったり、お茶をストローで飲んだりと、相応の工夫はされている様子。また花街では男性客が多いため、「家庭」を思わせるようなものは避けられているという。そのため「カレー」といった里心をつかせるようなメニューも、当然ご法度。だから作中でキヨは「おうちカレー」を作るために、わざわざ知り合いの家まで出向いている。好物ひとつ作るのも大変だが、それはそれとして折角なので、キヨが作った料理をひとつ再現してみよう。

【パンプディング】


 この料理は先輩舞妓の「姉さん」に自分のプリンを食べられてスネている舞妓さんのため、キヨが彼女のリクエストに応えて作ったもの。材料は、本書では分量は記載されていないのでかなり目分量だが、「パン(6枚切り)1枚」「卵1個」「牛乳150ccくらい」「砂糖大さじ1くらい」「バニラエッセンス」カラメルソース用に「砂糖適量」。これを本書の「小山さんちのごはんメモ」によれば「1.パンを切って卵+牛乳+砂糖+バニラエッセンスにひたす」「2.カラメルソースを作る。砂糖+水を好みの色になるまで煮つめる」「3.1に2をかけて、オーブンで湯せん焼きする」と完成。これを食べた舞妓さんは「このパン、プリンの味がする!!」と喜んでいたが、それはカラメルソースの存在が大きい。また本編未登場だが「ごはんメモ」にある、カラメルソースを作った鍋で牛乳を沸かして作る「カラメルホットミルク」も甘くて美味しいのでオススメだ。

 おっとりしすぎて舞妓には落第してしまったが、皆を支える「まかないさん」として立派に務めを果たしているキヨ。今後も本作でどんなメニューが登場するか楽しみだ。

文=木谷誠