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1+1=2ではない二人のチカラ。一人ではできないことを、二人の力で可能にするための一冊

『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』(ジョシュア・ウルフ・シェンク:著、矢羽野 薫:訳/英治出版)

 「三人寄れば文殊の知恵」という有名なことわざがあります。三人集まって考えれば、たとえその三人が凡人であっても文殊菩薩様が考えたような素晴らしい知恵が出るものだというたとえです。はたして、本当にそうでしょうか。三人の相性や、三人の外部との関わりは大きく「文殊の知恵」に関連しているはずです。

 人と人との間に関係が生じる最小単位である「二人」に焦点を絞った『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』(ジョシュア・ウルフ・シェンク:著、矢羽野 薫:訳/英治出版)で、歴史に名を残してきた偉人たちは決して一人でその偉業を成し遂げたわけではないと宣言することから、著者は本をスタートさせます。

 問題は、孤高の天才が空想にすぎず、神話(社会的な経験に関係なく、自分の世界で完結している天才がいるという神話)にもとづく神話(そのような天才が偉業を達成するという神話)であることだ。これは、イノベーションの社会的な性質を無視している。

 たしかに孤高の天才たちの物語は、人前で何か話をする時や飲みの場で誰かにサクセスストーリーを例示するのに都合のよいイメージになります。しかし、「三人寄れば文殊の知恵」と同様に、孤高の天才たちの偉業もまわりの人々との関わりを抜きにして語ることはできません。

 本書にとりあげられているのはアップルのスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアック、ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニー、哲学者のサルトルとボーヴォワールなど実在の人物から、スター・ウォーズのルーク・スカイウォーカーとハン・ソロなどフィクション上の人物まで及びます。どの一人を選び出しても、持ちつ持たれつの関係のパートナーがいることが分かります。

 彼らはどのように出会いを遂げたのか。「邂逅」「融合」などといった章立てがされており、偶然の出会いでも然るべき時に然るべき場所にいたことが解き明かされます。そのことも大きな関心事かと思いますが、本書の特徴的な点は、不調和や離別についても多くのページが割かれているところです。「距離」の章では、冒頭で著者がこのように述べています。

 多くの人と同じように、私は人間関係について「親しいかどうか」の基準で考えてきた。しかし、より重要なのは、2人の空間が生き生きとしているかどうかだ。親密さと信頼を深めつつ、好奇心や意外性をいかに保てるかなのだ。

 気のおけない仲間と一緒に仕事をする。飲みニケーションで交流を深める。たしかにそうした絆も素晴らしい仕事を生み出すでしょう。しかし、なあなあの関係に陥ってしまうリスクもあります。適度な距離、不調和による不安はむしろ緊張感を含んだ創造空間を形成し、良い結果を生むのかもしれません。

 そうしたパートナーを見つけるのに時間がかかったり、すぐそばにいるのにまだ気づいていなかったり、人と人との出会いは様々です。いずれにしても人は一人では生きていけません。名コンビの相手が見つかっている方も、探し求めている方も、1+1=の先を最大限にするために必見の一冊です。

文=神保慶政



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