世界観、難解さ、過去と未来の融合……すべてが「神話」のようなAIエンタメだ!『エクサスケールの少女』【書評】

文芸・カルチャー

2017/6/2

この物語はまさしく一つの神話のようだ! というのが読み終わった後の素直な感想でした。もしかしたら、この作品を読む読者の皆さんは、僕がそうであったように、膨大な知識量についていけず、やや消化不良に思うところがあるかもしれません。

国内外問わず、神話というものが大抵そうであるように、この物語も、「もっとそこ盛り上げて書いてよ!」と思うところが驚くほどあっさり流されていたりします。

そうやって特に前半、現代のエンタメの風潮である過剰なまでの分かりやすさが確信的に避けられ、神話的な語り口で様々な伏線が張られていきますが、後半は溜めたバネがいかんなく弾けるように一気に加速します。

読み終えてみれば、エンターテインメント的なカタルシスのある読後感に包まれ、著者・さかき漣さんの多岐に渡る知識や興味から作り出された世界観にもっと浸っていたかったと思うでしょう。

全編を通して、人工知能、万葉集、出雲神話、鉱石、大震災、果ては人種差別まで、様々なアプローチで物語の世界が紡がれていき、それに惹き込まれていくのです。

特に「古事記」といった日本の神話を絡めて、人工知能的な現代の物語性と古代のそれとを重ね合わせる手法というのはまさに圧巻です。そうやって、時間軸を超越していく世界観が何よりもこの作品の魅力なのかもしれません。

「人工知能が発展した社会がユートピアなのかディストピアなのか?」というのは、この作品の一つの大きなテーマでもありますが、さかき漣さんが出した答え、そして未来に繋げる、重要な概念とは何か? ぜひ多くの人に、それを読んでもらいたいです。

-ドラマプロデューサー 橘 康仁-

 

〈プロフィール〉
たちばな・やすひと
1975年生まれ。ドラマプロデューサー(ドリマックス・テレビジョン所属)。主なプロデュース作品は『破獄』『絆~走れ奇跡の子馬~』『結婚式の前日に』『ペテロの葬列』『ムッシュ!』『ふたつのスピカ』他。