社会

日本中の使用済み核燃料が集まる「六ヶ所再処理工場」ってどんなところ?

『原発より危険な六ヶ所再処理工場』(舘野淳、飯村勲、立石雅昭、円道正三/本の泉社)

 もし、原子力発電所が事故に見舞われたら――2011年に起こった東日本大震災で福島第一原子力発電所が機能を停止。電源供給が絶たれたことで水素爆発や炉心融解が発生し、周囲が放射能に汚染され、防護服を着ないでは近づくことができない状態に。震災以降も復興作業は進んでいるが、全ての工程が終了するまでには途方もない時間がかかるだろう。

 さて、もう一つ。青森県六ヶ所村にある「六ヶ所再処理工場」という施設をご存じだろうか? 原子力発電所に“危険”があるということは先述の通り。しかし、それよりも危険なのが、日本中の原発から“核のゴミ”が集められる「六ヶ所再処理工場」。その施設の役割・仕組み・問題点などについて書かれているのが『原発より危険な六ヶ所再処理工場』(舘野淳、飯村勲、立石雅昭、円道正三/本の泉社)だ。

「六ヶ所再処理工場」とは、どのような施設なのだろうか。簡単に説明をするならば、原子力発電所から出た使用済み核燃料をリサイクルし、再び使うことができるようにする場所だ。さらに「高速増殖炉」と呼ばれる施設と併せてリサイクルを進めることができれば、リサイクルをしない場合よりもおよそ100倍、核燃料を使用することができるという。

 100倍有効利用できる、というだけではわかりにくい。例えば石油は約50年、石炭は約110年で採掘できなくなってしまう。この年数を「可採年数」と呼ぶのだが、原発の燃料となる天然ウランは可採年数が110年程度。この100倍ということは、理論上1万年以上原子力発電を使い続けることができるようになる。資源が乏しい日本にとって1万年使えるという原子力発電所はとても魅力的なのだ。

 しかし「高速増殖炉」開発は難航。福井県にある高速増殖原型炉「もんじゅ」は事故・不祥事が相次いで、昨年末、1兆円以上の研究費用をかけた夢の高速増殖炉は廃炉されることになった。「六ヶ所再処理工場」だけの稼働なら、増加する可採年数は20~30年ほど。1万年という途方もない数字には到底及ばない。しかも1993年に建設を開始した再処理工場は、度重なる事故や故障で2017年現在も未完成のまま。稼働実績がほぼない状態で再処理工場の建設費用に2兆円以上、「もんじゅ」と合わせれば3兆円以上の費用が使われている。

 また本書では再処理工場の危険性についても述べている。東日本大震災と同様の地震が六ヶ所村付近で起こる可能性は否定できない。使用済み核燃料が発する高線量の放射線が外へ漏れ出さないか、また、核分裂が連鎖的に起こり、放射線や熱が発生する“臨界”が起こる可能性も考えられる。他にも再処理に必要な薬剤による装置の腐食や火災・爆発が起こる危険。また、長期間放射線を放出する“放射性廃棄物”を地中深く埋めるという捨て方は決まっているが、どこに放射能をまき散らすゴミを捨てるのか、現時点で決まっていない。解決しなければならない問題は山積みだ。

 ところで、他の国では再処理工場の事故は起こっていないのだろうか。実際にこれまでに施設の不具合から、大量の放射性物質が放出されたり、高レベル廃液が地下へ漏えいしてしまったりする事故が過去に起こっているという。六ヶ所再処理工場は事故が起こった諸外国の技術を転用して作られているため、実運転するようになってから何かしらの事故が起こっても不思議ではない。「リスクばかり考えていては何もできない」という意見もあるかもしれないが、“人の安全”を考えれば、無視することはできないはずだ。

 上記で述べたことは、ほんの一部でしかない。詳細な仕組みや問題点などは、本書をご確認いただきたい。

 東日本大震災のとき、原発があのような被害をもたらすということを私は想像すらできなかった。原子力発電所に対する「無知」を思い知らされ、正直悔しい気持ちだ。まずは知らなければいけない。今後も原発を稼働させ、再処理工場や高速増殖炉の研究を進める道を選ぶか、あるいは危険が及ぶ発電方法を思い切って捨てて新たな道を模索するか。「わからないから何となく…」で決めてしまわぬよう今後も学び続けたい。本書を読み、そのように感じた。

文=冴島友貴



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