SNSの究極のカタチ!? バーチャルリアリティ上の「セックス」にハマる近未来の高校生たち

アニメ・マンガ

2017/6/3

『S〔エス〕―君と、彼女と、運命と』(南部ゼロイチ/TOブックス)

  LINE、Twitter、Facebook、Instagram……。これらSNSの台頭によりガラッと変わったのが、コミュニケーションのカタチだ。電話やメールよりも気軽に連絡をとることが可能になり、見ず知らずの人との仲を深めることもできるようになった。SNSを介した出会いが交際に発展し、結婚にまで至ったというカップルも珍しくない。もちろん、さまざまな問題もあるが、現代人にとってSNSはなくてはならないツールになったといえるだろう。

 連載型新作マンガ配信サービス「GANMA!」にて連載中の『S〔エス〕―君と、彼女と、運命と』(南部ゼロイチ/TOブックス)で描かれるのは、そんなSNSが究極的に進化した世界を舞台にした、高校生男女の恋愛だ。本作は5月1日(月)に第1巻が刊行されたばかりの新作マンガだが、緻密に構成されたその世界観がマンガ好きを魅了している。「これはきっとヒットするに違いない……!」と、読者を興奮させてくれる作品なのである。

 舞台となるのは2045年の日本。こめかみに埋め込むインプラント型情報端末「epo-C」により、人々は「Sシステム」と呼ばれる仮想空間上でコミュニケーションを図ることができるようになった。このSシステムとは、人の意識を具現化し、バーチャルリアリティとして体験できるようにしたもの。簡単にいえば、ケータイやPC越しに投稿・閲覧するのではなく、自らの身体をもってリアルに見聞きすることができるSNSのことだ。

 そんな世界で若者たちが熱をあげているのが、「SX」。これは恋人同士がSシステム上で待ち合わせをし、性行為に及ぶこと。つまり、バーチャルリアリティ上でのセックスのことである。

 それを利用し、恋人と大人の階段を登ろうとしているのが高校生・宙生駆(そらお・かける)。交際2年目となる彼女・紬汐里(つむぎ・しおり)を誘っては、そのチャンスを虎視眈々と狙っている。けれど、奥手な汐里と、リアル童貞な駆とではいつもうまく噛み合わない。キスすらできず、悶々とした気持ちを持て余す毎日なのだ。

 現実世界でのセックスを経験する前に、まずはバーチャルでのそれを済ませようとする。彼らの姿は妙にリアル。傷つきたくない、傷つく前に練習しておきたい。そんな若者の気持ちと、Sシステムとの相性はバツグンなのだろう。直接会って思いを告げるのではなくLINEやTwitterなどのメッセージ機能で告白する、現代の若者像にも重なるところがある。

 しかし、SNSにハマってしまえばその弊害があるのも事実。駆にとってのそれが、「ウイルスによるSシステム依存」。そこから救い出すためには、彼のSにアクセスするしかない。そこで汐里は身を挺して、駆のS空間に飛び込むのだが、そこは彼の理想世界。駆が主導権を握る世界で、汐里はとんでもない条件を提示されることになってしまう……。

 繰り返すが、本作は近未来を舞台にした作品だ。Sシステムのようなバーチャルリアリティが現実のものとなるかどうかは、現時点で半々といったところだろう。しかし、そこで描かれる高校生たちの姿は非常に等身大。異性に興味津々で、だけど一線を超えるのは怖い。どんなに技術が発達しても、そのコアな部分は変わらないのかもしれない。

 ちなみに、第1話の冒頭で駆は少女型のAIシステムのようなものにこう宣告されている。「あなたは次の誕生日までに ある女の子とリアルでえっちをしないと… 死にます」。この「リアルで」というところに、作者の意図を感じる。どんなにSNSが発達したとしても、たとえ本作のように仮想現実を楽しむ世界が訪れたとしても、一番大切なのは「生身でのふれあい」。本作は、暗にそんなメッセージがこめられたラブコメなのではないだろうか。

文=五十嵐 大

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