「母さん。あなたは今、幸せですか?」衝撃の告白に涙が止まらない! 3度の離婚、不倫…50歳の息子と母の100通の書簡劇!

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更新日:2017/7/3

『母への100の質問状』(森谷雄/SBクリエイティブ)

 母になる前の自分の母のことを、多くの人は知らない。どんな恋をして、どんなことに傷ついて、どんな想いをして自分を育てたのか。面と向かって聞くのが気恥ずかしいという気持ちは当然あるし、自分の母としてではない母の一面を知ることへの怖さもある。それでも、思い切って質問を投げかけてみれば、母と自分の新たな関係を築くきっかけになるかもしれない。

『ザ・クイズショウ』『深夜食堂』などの数々の人気ドラマをヒットに導いたプロデューサー・森谷雄氏が100に及ぶ母とのやり取りをまとめたのが、『母への100の質問状』(森谷雄/SBクリエイティブ)だ。森谷氏の記憶にある母は離婚と結婚を繰り返す恋多き女性。また、ずっと働きづめで苦労をしてきた人でもある。自身の息子が生まれたことをきっかけに母へ質問状を送ることを思いついた森谷氏の目には、母の人生は幸せなものではないように映っていた。「母さん。あなたは今、幸せですか?」その質問の答えを確かめるために、質問を進めていく。

 質問は「僕が生まれる前の母」から始まり、繰り返される離婚や離れ離れになった家族について、4人の父親についてなど、母の人生をなぞるような形で進んでいく。質問の中には、母として答えづらいものも少なくない。印象深いのは、2番目の父について問われた時の回答だ。

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質問14「その時、母さんはどんな気持ちでその人と暮らしていたのですか?」

答え14「その人はとてもいい人でした。けれど、母さんには愛情はありませんでした。私はとても卑怯だと思いました。でも、あなたたちをとても可愛がってくれるいい人でした……」

 子どもにはできれば隠しておきたい、女のズルさのようなものが透けて見える答えだ。それにもかかわらず、問われる質問に母はどこまでも真摯に向き合い、一生懸命言葉を紡ぐ。

 その後母は自立しようと、2番目の父と別れて化粧品会社に就職する。様々な仕事を掛け持ちしていた母と子は一時離れ離れになったもののまた共に暮らせるようになるが、平穏な日々は続かない。3番目の父の借金、4番目の父となる人との不倫、再度の離婚……。壮絶な人生に、読み進めながら胸が痛む。

質問34「その時のあなたにとって恋と仕事と子どもたちはどんな比重だったのですか?」

答え34「比重は子供たちが一番でした。何があっても、私の中では切り離すことができないものでした。でも、恋というものの比重も高くて、重くて、メチャクチャになるほど苦しみました……」

 その後も質問から明かされる母の人生は、自身の逮捕やがんとの闘い、不動産業者からの詐欺、夫の鬱と、苦難に満ちている。

 そして、100問目。著者がずっと聞きたかった、最後の質問をする。

「母さん。あなたはいま、幸せですか?」

母は、「はい。幸せです」と答えた。

 100通の書簡劇から見えてくるのは、一人の女性の強くまっすぐな生き様だ。どんな困難に直面しても逃げ出さず、子どものためにどこまでも立ち向かった。

「ありがとう」

 この、全ての質問を終えた後の著者の言葉に、母の人生を垣間見た息子の想いの全てが詰まっている。

 本書の終盤、母のこれまでを書き連ねたページで、涙が止まらない人は多いだろう。最近母親と連絡を取っていない、という人は、著者のように質問状を送ってみては。きっと、今まで知らなかった母の素顔が見えてくるはずだ。

文=佐藤結衣