「そういえばどこいった?」―絶滅寸前の「エロ本自販機」を探してみた!

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公開日:2017/6/17

『全国版 あの日のエロ本自販機探訪記』(黒沢哲哉/双葉社)

 押し入れから出てきた古ぼけた写真、うっそうと茂った雑草だらけの土地にひっそり佇む廃墟、疲れ切ったオジサンの背中――どこかもの悲しさが漂う対象に、人は“哀愁”を感じる。そんな哀愁を感じるものの一つに是非「エロ本自販機」を加えていただきたい。

「エロ本自販機」をご存じだろうか? 繁華街から少し離れた場所に、こっそりといかがわしい商品を求めてやってきた客人を待っているアレだ。そんな自販機であるが、最近とんと目にしなくなった。私が小中学生の頃、ちょっぴり(だいぶ?)田舎な実家の周りには、ざっと数えて3台は徒歩圏内にあったものだ。しかし、今となってはどれも撤去されてしまい姿を消してしまった…。「エロ本自販機」は絶滅の危機に瀕しているに違いない。

 危機的状況にある「エロ本自販機」。そんな中、日本全土に現存するものほぼすべてを探し出し、撮影した『全国版 あの日のエロ本自販機探訪記』(黒沢哲哉/双葉社)が出版された! 北は北海道から、南は鹿児島まで。稼働中のもの、すでに稼働していないものを含めて300以上が掲載されている。中には、東日本大震災の被害を免れた自販機や「なぜそうなってしまった!」と思わずツッコミを入れたくなるような自販機があるなど、眺めているだけでため息が出るほど“哀愁”が漂うものばかり。

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「近くにあるエロ本自販機に行ってみたい…」

 居ても立ってもいられなくなり、さっそく本書で付近の自販機を調べてみることに。だが、我が千葉県はエロ本自販機が一台もない、エロ本自販機絶滅県であることが判明。なんと千葉県を含め13の都道府県ですでに絶滅しているらしい…。なんてこった。

 近い将来、全国から日本固有の「エロ本自販機」がなくなってしまうかもしれない。今見ておかなければきっと後悔する。思い立ったが吉日! 私は本書を片手に、バイクにまたがり、自販機が存在するお隣の茨城県へと向かったのだった…。

霞ヶ浦・北浦のほとりに、ひっそり佇むエロ自販機(茨城県・鹿嶋市)

 最初に発見したのは、霞ヶ浦に沿って北に延びる県道沿いの自販機。スマホの地図アプリで当たりをつけ、付近を捜索したらすぐに見つかった。まるで自販機スペース隠すように緑に囲まれている様が、恥ずかしさを押し殺して購入に訪れる若者をやさしく隠してくれているようだ。ちなみに私ほどのプロになると、女性が通っても気にしない。純粋無垢な小学生たちが通ったら一瞬躊躇するがやっぱり気にしない。

 中に入ると目の前には「年齢確認ボックス」と書かれた箱があり、箱の真ん中あたりに「免許証投入口」なるものが。個人情報の心配もあるが、何より免許証を入れて出てこなくなるのが最も怖い。お父さんの免許証をこっそり拝借して、入れてみたら出てこなくなったとなったらトラウマ必至だろう。ともあれ、このシステムがあれば「青少年の健全な育成」を阻害することがないはずだ。

堆肥工場前にある“知る人ぞ知る”自販機小屋(茨城県・笠間市)

 二つ目に訪れたのは笠間市にある自販機。写真を見ればお分かりいただけるだろうが、小屋の外装には何も書いていない。おかげで、目の前の道路を3往復してやっと発見に至った。そもそも中に入っていいのだろうか、と躊躇われるほど「エロ自販機」らしくない造りで「一見さん」の侵入を拒んでいるようだ。“知る人ぞ知る”というオーラを漂わせている。

エロ自販機の覇者「こっそり堂」(茨城県・笠間市、土浦市)

 実は「エロ自販機」にもチェーン店が存在する。その名も「こっそり堂」。思わずその名をつぶやきたくなる「こっそり堂」。遠くからでも結構目立つ外装だけど「こっそり堂」。

 今回は笠間市と土浦市の2店舗を訪れたのだが、驚いたのはその広さ。これまでの小屋は自販機が4台ほどだったのに対し、「こっそり堂」は10台を超える。たまたま、見つけた小屋がそうだっただけなのかもしれないが、品揃えに関しても他の小屋と比べると抜群にいい。旅行先で偶然「こっそり堂」を見つけたらカップル・友人同士・おひとり様でも是非訪れていただきたい。

 本書には簡単な住所が記載されているので、近くまで行くことができるが、近くに行っても簡単に見つけることができないことも。ここは焦らず宝探しだと思って、心に余裕を持つべし。見つけたときの「あった~~!!」という感動と、ノスタルジーすら感じてしまう自販機小屋の佇まいは、けっこう病みつきになるかもしれない。

 また、著者が撮影した味のある自販機小屋写真の数々やエロ本自販機の歴史、業者インタビューなども充実しており、存分に楽しむことができる。「そういえば、どこいったんだろう…」と思った方は一読の価値あり!

文=冴島友貴