鍛えるなら筋肉より骨!? 何歳でも動けるからだをつくる「骨呼吸エクササイズ」

健康・美容

更新日:2017/7/18

『50歳からは「筋トレ」してはいけない 何歳でも動けるからだをつくる「骨呼吸エクササイズ」』(勇崎賀雄/講談社+α新書)

 からだを引き締めたい。そう思い立ったときに、真っ先に頭の中に浮かぶのは「筋トレ」である。三日坊主になるかはさておき、ふと「とりあえず腹筋でもやってみようか」と一念発起したことがある人も少なくないだろう。しかし、誰もが抱く“筋肉さえ鍛えればよい”という「筋肉神話」に異論を投げかける本がある。

 人間のからだを支えているのは、筋肉ではなく骨。だからこそ、骨から鍛えようと提案するのは『50歳からは「筋トレ」してはいけない 何歳でも動けるからだをつくる「骨呼吸エクササイズ」』(勇崎賀雄【※崎は正しくはたちさき】/講談社+α新書)である。タイトルこそ「50歳から」となっているが、実際は世代の垣根を越えて、私達がよく見聞きするからだの鍛え方を見つめ直せる一冊となっている。

■人間のからだを支える“骨”がなければ筋肉も機能しない?

 骨を鍛えるといっても、おそらく多くの人はいまいちピンとこないのも事実である。しかし、その必要性を唱える著者は骨こそが「人間のからだを大元で支えている」と主張する。

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 例えば、筋肉もその恩恵を受けている一つだ。筋肉はそもそも、骨の動きに連動して初めて機能する。そして、重力に逆らい生きる私達にとっては、骨がしっかりしていなければ直立もままならない。さらに、血液や体内のホルモンを調整する役割もじつは骨が担っていたりと、細かく見てみると人間がどれほど骨の力に助けられているのかが分かる。

 そこで、医療の世界でも“筋肉さえ鍛えればよい”という常識がまかり通る現状を憂う著者は、みずから実践的な骨のトレーニング方法「骨呼吸エクササイズ」を考案した。本書の内容から、その手順を2つ紹介していこう。

■「背骨の骨呼吸エクササイズ」で全身のエネルギー代謝を促す

 人間の骨は全身で“200個” ほどだといわれる。その中でも、背骨は全身のエネルギー代謝を促す重要な役割を担っているという。本書にある「背骨の骨呼吸エクササイズ」を覚えれば、衰えた体力の改善にも役立つ。ヒザの上に手を置いたまま、イスに座った状態から始めてみよう。


a)上半身を少し前に傾けた状態でアゴ、首、肩を左右に揺さぶる
b)首や肩がゆるんだ感覚をつかめたら、上半身を一度起こす
c)アゴを少し引き、背骨を丸め込むように頭を座面の高さほどに下ろす
d)胸や肩の位置から背骨を支える感覚で、ゆっくりと上半身を起こす
e)dに続き、アゴと頭で背骨を引き上げるようにさらに上半身を起こす

 この方法は人間の理想である背骨の“S字カーブ”を描くのに効果的。実践する場合は筋肉に頼らず、腰や肩、アゴや頭の骨で背骨を支えるように動かす意識がポイントだ。

■ぶらぶらさせるだけで全身を活性化する「手振りのエクササイズ」

 背骨が全身の代謝を促す役割を持つ一方で、手も「人間にとって大切な、あるいは人間を象徴するからだの部位」だと著者は主張する。それは、日頃から手を使って何かをするというのはもちろん、例えば、脳卒中のリハビリで重視されるように脳へ刺激を与える意味でも重要な役割を担っているからだ。

 本書で紹介されている「手振りのエクササイズ」は、全身を活性化させるために役立つ方法である。


 手順は簡単で、からだの前に手をびろんと伸ばし左右に振るだけだ。指先に力を入れず伸ばした状態で振るのがポイントだが、上手に実践するためにはリズムも重要。まずは親指と小指で2拍子の「タン・タン」というリズムを意識して、慣れてきたら、小太鼓の連打のように「タン・タン・タン・タン」と速く動かしていく。

 また、手首が腕の内側に鈍角で入り込んでしまうと、骨ではなく筋肉に頼る動きになってしまうので注意が必要。それを避けるために、片方の腕はヒジと手首を直角に曲げたまま保ち、もう片方の腕で「手振り」をするヒジを固定する方法もある。

 骨は文字通り人間にとっての“屋台骨”である。しかし、表面的に動きを感じられる筋肉と違い、その恩恵を考える機会はなかなかない。本書は「何歳でも動けるからだをつくる」というテーマのもと、実践的に骨の鍛え方を伝えてくれる一冊であるが、日頃のトレーニングやエクササイズにぜひとも取り入れてみてほしい。

文=カネコシュウヘイ