売れっ子マンガ原作者が実践した2つ目の夢「司法試験合格」を叶えた”論理的思考”とは!?

仕事術

更新日:2017/6/28

『2つの夢を叶える方法』(河本ほむら/ポプラ社)

 はじめに夢ありき。誰にだって、やってみたいこと、なってみたい自分、叶えたい思い――夢がある。夢は見るものではなく叶えるものだと、人は言う。けれど、夢を叶える方法が分からず、志半ばに諦める人は少なくない。

 そんな中、マンガ原作者と司法試験合格という、全く異質で難度の高い世界で同時に夢を叶えてしまった人がいる。それが『2つの夢を叶える方法』(ポプラ社)の著者・河本ほむら氏だ。

 まもなくアニメが放送開始されるシリーズ累計200万部超の人気マンガ『賭ケグルイ』の原作者である河本氏は、なんと、マンガ原作を描くと“同時”に司法試験の勉強をし、商業誌デビューと試験合格を、成し遂げたのである。

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 数々の挫折も経験し、自身を「天才ではない。普通の人」だという河本氏は、いかにして複数の夢を成し遂げたのか? 夢の扉を開くカギ――「論理的思考」とは?

夢を叶えるための論理的思考と三段論法

 まずは、「ひとつの夢」を叶えるための基本――論理的思考を学ぼう。「論理的思考」という言葉は難しそうに見えるが、つまりは「筋道立てて物事を考える」ということだ。

 その基本はソクラテスの三段論法にある。「すべての人間は死ぬ」→「ソクラテスは人間である」→「ゆえにソクラテスは死ぬ」という「大前提→小前提→結論」の思考プロセスだ。それを河本氏は夢の実現するために「夢(大前提)→自分(小前提)→方法(結論)」という「オレ的三段論法」に置き換えた。

(1)夢=何がやりたいか

 まずは、自分の「夢の核」をハッキリさせなくてはならない。あなたが思い描く夢に含まれる様々な要素の中から「なくしてもいい要素」を見つけよう。

 必要か不要かのジャッジラインは「代替できるかどうか」。河本氏は「マンガ家になりたい」という自身の夢の要素をこう分析した。

 「売れっ子マンガ家になりたい」不要
 「マンガでお金を稼ぐ」必要
 「マンガを読んでもらう」必要
 「マンガを描く」必要

 この過程を経て、河本氏は「マンガ家になりたいという夢」とは「商業マンガを描いて生計を立てる」ことだと導き出した。「夢の核を明確化する」=「夢を具象化する」ということなのだ。

(2)自分=(周囲と比して)何ができるか、何が必要か

 だが、河本氏の夢は「マンガを描く」ことであって「マンガ原作者でいいの?」と疑問に思う人もいるだろう。そこで、2段目の「自分」へと進もう。

「自分の絵は商業レベルではない」と判断した河本氏だったが、アマチュア時代の作品の評価などから「自分は絵は描けないがストーリーなら勝負できる」と、自らのストロングポイントを見つけた。そうして、改めて「マンガを描く」を具象化し、「自分の手が入ったマンガを作る」ことで「夢の要素」が代替できると考え、河本氏はマンガ原作者の道を選んだのだ。

(3)方法=何をやるべきか

 自分の夢が明確になり、自分にできることが見えたら、あとは実行に移すのみ。まず考えるべきは4つ―― 1.必要となる能力、2.必要となる実績、3.必要となる勝負の場、4.勝負の場を超えるレベル――である。

 中でも3と4は重要だ。マンガ家になりたいのであれば、勝負の場は「新人賞」や「持ち込み」などになる。ところが、多くの人は「完璧な作品で挑みたい」「受賞できる作品を出したい」と思い、応募をためらってしまう。だが、作品を完成させ、応募しないことには、誰の目にも触れることすらなく、存在していないのと同じなのだ。

「勝負の場」で他者の目に晒して作品の評価を得ることで、自分を再評価し、足りないものを補うための方法を考え、「勝負の場を超えるレベル」へと自分を高めていくことで、初めて「夢を叶える」ことができる。

 河本氏は、多くの新人賞=勝負の場に挑む準備をしていたという。そのうちの一本が、「勝負の場を超えるレベル」に達し、商業デビューへの道が開かれたのである。

2つの夢を叶えるための時間の作り方

「オレ的三段論法」によって「ひとつの夢を叶える」方法はわかった。では「複数の夢を叶える」ためには、何をすべきか? そこには特別な秘密はない。「とにかくやり続ける」こと、これしかないのだが、ポイントは「夢のために使える時間の確保」にある。1日はどう逆立ちしたって24時間しかない。「生活に優先順位」を付け、論理的に整理して、夢を叶えるために使う時間を捻出しよう。

 自分の1週間のスケジュールを「仕事・学業」「必要雑務(家事など)」「余暇」「休息」の4つで仕分けし、そこに含まれる無駄、すなわち「余暇(無駄な遊び)」を削除していく。恋人や友人との交際、飲み会、趣味の集い……これらは生活の潤いになるが、貴重な時間を食い潰し、必ずしも夢に直結するわけではない。「自分の時間がない状況」は「他人によって時間配分ができなくなっている状態」なのだ。「前進を得られない人間関係を減らす」「なくなっても困らない他人かどうか判別する」「夢につながらない遊びでしかない時間をなくす」「無駄な休息を減らす」……かなりストイックでドラスティックに自分の生活を変えなくてはならない。簡単には割り切れないだろうが、夢を叶えるために、自分がどこまで本気なのかを問う機会になる。

 駆け足で「2つの夢をかなえる方法」を紹介してきたが、本書にはさらに具体的な方法や、河本ほむら氏の作品作りにおける「論理的創作方法」などが、詳細に記されている。これらの論理的思考は、夢を叶えるだけではなく、仕事や勉強の仕方にも大いに役立つはずだ。夢に向かっている人も、諦めきれない夢を抱えている人も、本書に記された秘伝を会得して、夢を叶えてほしい。ひとつといわず、いくつでも。

「さあ、夢を叶えましょう!」

文=水陶マコト