ヤクザ×医師の甘い生活にもピンチが訪れる……!? 大人気BL「極道さん」シリーズ最新刊発売

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

『極道さんはヤキモチ焼きなパパで愛妻家』(佐倉温/KADOKAWA)

BL小説の話題作『極道さんはパパで愛妻家』(佐倉温/KADOKAWA)。「なにがそんなに人気なんだ?」というのを、今回は真面目に考えてみたいと思う(お付き合いください)。

まずは基本情報を。
【カップリング】
男の色気が漂う硬派なヤクザ×美人系医師。(麻薬や銃器は取り扱わない、ある意味地域の警察的な役割を担っているカタギなヤクザである)

【2人の属性】
幼なじみ。ケンカの絶えないケンカップル。お互い「愛し愛され」が激しい(だからこそ、ケンカをする)。攻めの独占欲が強い。受けもヤキモチ焼き。2人とも男前。両想いなのに片想い。

advertisement

【特記事項】
・事情があり、一緒に住んで「子育て」をしている。
・結婚する。

【備考】
・美人系受けは童貞で、自分がモテるという自覚がない。
・お互いゲイなわけではなく、「好きになったのがたまたま男のお前だった」という性別を越えたオンリーワンパターン。

BL好きの方なら、そろそろピンと来ているのではないだろうか。
そう、この小説……誰しも一つは引っかかるであろう萌えポイントがあちこちに詰まっているのだ。

幼なじみのヤクザと医師という設定がまず目を惹く。受けが美人なのに童貞なのもよい。さらにケンカップルとなれば嫌いなわけがない(私が)。そんな2人が「子育て」をしている。その上、攻めが受けを大好きで惜しげなく愛情表現をするのに、それを男のプライドとか誤解があって、本当は攻めのことが大好きなのに素直になれず「お前なんか大嫌いだ」とか言ってしまう受けとか(これが両想い片想いという意味です)、……どう考えても、いい。すごく萌える。彦摩呂風に言うならば「萌えの宝石箱やぁ」という感じだ。

遅ればせながら、あらすじを。
地域に根差した雨宮医院の3代目である雨宮佐知(あまみや・さち)は、類まれなる美貌の持ち主。だが、その地域を統括している極道組織の『東雲組』若頭である東雲賢吾(しののめ・けんご)の積極的なアプローチを煩わしく思っていた。
ある時、賢吾は「俺たちの子供ができたぞ!」と佐知の元に愛らしい史(ふみ)という少年を連れて来る。彼は賢吾の父の隠し子で、事情があり賢吾の元に。史のことを心配した佐知は子育てを手伝うため、やむをえず賢吾と史と一緒に暮らすことに。
自分のことを「嫁」扱いする賢吾に、当初は反発していた佐知だが、史との出会いを通し自分の本心に向き合い、賢吾に対する「恋心」に気づく。だが、佐知は過去の出来事から、「賢吾と恋はしたくない」という思いが強く……。

以上が1巻のあらすじである。「好きなのに素直になれない」佐知が、賢吾の愛を受け入れるまでの展開はもどかしいながらも、心情や葛藤などが丁寧に描かれていたのが良かった。2巻ではさらに佐知と賢吾の関係が進展し、お互いの関係がより深いものになる。

そして6月1日に電子書籍化された最新刊『極道さんはヤキモチ焼きなパパで愛妻家』。こちらは、ようやく恋人らしい恋人になった賢吾と佐知の間に「金髪美青年の襲来者」がやって来て、空前絶後のヤキモチ焼きである佐知が賢吾とケンカをしてしまう……という展開になっている。
史のバージョンアップした「天使度」も見どころだし、童貞で慣れていない感がかわいかった佐知が、(性的に)大胆になっていくのも見逃せない。特に3巻は佐知の「進化」がすごいので、2巻まで既読の方は最新刊も読まなくちゃもったいない……と思う。

いかがだろうか? 「極道さん」シリーズが人気を博している理由が、少しでも伝わったら嬉しい。2人の激甘ぶりと史の愛らしさは、きっと仕事で疲れた心に潤いを与えてくれるだろう。

文=雨野裾