『銀魂』の土方さんは、あんなにマヨネーズを摂取して大丈夫なの?

公開日:2017/7/8

 『銀魂』の土方十四郎は、江戸を守る武装警察「真選組」の副長である。クールな美男子で、刀を抜けば鬼神のごとく戦う。局長の近藤勲は「研ぎすまされた奴の剣は鉄をも切り裂く」と土方の剣技を絶賛する。
そんなクールな土方が並外れたマヨラーなのだから、人間は奥が深い。ヤキソバやチャーハンにはもちろん、お茶漬けにも山盛りにかける。マヨネーズがご飯の上にトグロを巻く「土方スペシャル」というものも!
人間とは、こんなにマヨネーズを摂取して大丈夫なのだろうか。

◆マヨまみれの人生!

 彼のマヨネーズ摂取量を、マンガのコマから割り出してみよう。
ヤキソバにかけたマヨネーズは、直径15㎝、高さ5㎝ほどの円盤状だった。このときの推定マヨネーズ重量は420g。それでも「たりないんだけどォォ!」と不満を漏らしているのだから、すごいマヨラーである。
別のシーンで推定すると、カツ丼には880g。また、定食屋で食べた「土方スペシャル」には990gほどかけていた。これらには文句を言っていなかったので、これぐらいかければ満足するらしい。

 つまり土方は、一回の食事で平均1㎏ほどのマヨネーズを摂取するのだろう。
独立行政法人産業技術総合研究所が2007年に発表した「油脂類摂取量」の報告によると、マヨネーズ・ドレッシング類の1日1人あたりの購入量は4.0gだから、土方が日に3食同量を摂取するなら、常人の750倍だ。
これだけのマヨネーズを消費するとなると、おカネもかかる。お得な「キューピーマヨネーズ1kg大容量タイプ」が744円(税抜き価格/17年5月現在)なので、1ヵ月分で合計7万2317円。マヨネーズ代だけで、これだけかかるのだ。

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◆太って別人みたいになる!

 こんな食生活を送っていたら、土方の体はどうなるのだろう?
マヨネーズの原材料に植物油が占める割合は、なんと70%だ。油がこれだけ多いと、摂取カロリーは大変なことになる。土方が一回の食事で摂る1㎏のマヨネーズは6670キロカロリー。1日3食で2万キロカロリー。

 しかも、これはマヨネーズだけの分。すでにご飯やおかずで必要な栄養量は足りているはずだから、マヨネーズの2万キロカロリーは、まるまる脂肪に変わって体内に蓄積される運命だ。つまり太る!

 過剰に摂取した栄養は、9キロカロリーあたり1gの脂肪に変わる。2万キロカロリーともなると、一日に2.2㎏も太ってしまう。1ヵ月経つと66㎏増えるから、64㎏だった土方は130㎏に。1ヵ月ぶりに会った友人は、たぶん土方と気づかないのではないかなあ。

◆銀時とどっちが不健康!?

 『銀魂』には、土方に劣らぬ不健康な生活を送っている男がいる。誰あろう、主人公の坂田銀時その人だ。
彼は仕事場の万事屋に「糖分」と大書した額を掲げるほどの甘い物好きで、血糖値は糖尿病スレスレ。大好物のチョコレートパフェは医者に「週一回」と制限されている。この主人公、土方とどっちが不健康なのか。

 図らずも2人が不健康対決を演じたことがある。土方がマヨネーズ990gの「土方スペシャル」を食べていた定食屋で、銀時も甘~い小豆餡を大量にかけた「宇治銀時丼」を食べていた。
990gのマヨネーズに含まれるのは、エネルギー6600キロカロリー、コレステロール1.5g、塩分21.2g。いずれも一食で、1分の摂取基準量の倍以上だ。
一方、宇治銀時丼の小豆餡が、マヨネーズと同じ990gだった場合、使用される砂糖の量は550gほどと思われる。これに含まれる栄養量は2400キロカロリー。おや、意外に低い。そう思ったあなたは、もはや感覚が土方スペシャル化しておりますぞ。

 心配なのは、砂糖に中毒性があることだ。大量摂取が習慣化すると、次のような症状が出るという。
「忘れっぽい」「集中力や忍耐力がなくなる」「感情がコントロールしにくく、カッとしやすい」「苛立つ」「気分が落ち着かない」「心が空白になる」「頭が混乱しやすい」「劣等感に悩まされる」「いつも緊張を感じる」。おお、どれも銀時に当てはまる……。

 土方はカロリーの摂り過ぎで、銀さんは中毒症状が出始めていて、どっちもヤバいのではないかなあ。このままでは、土方は脳卒中か心筋梗塞、銀さんは糖尿病か腎不全になる可能性も……。2人とも健康に気をつけてもらいたいと切に願います。【了】

◆著者プロフィール
柳田理科雄
空想科学研究所主任研究員。代表作に「空想科学読本」シリーズ。また、各地での講演、ラジオ・TV番組への出演なども精力的に行っている。

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◆プロフィール
柳田理科雄
1961年鹿児島県種子島生まれ。東京大学理科Ⅰ類中退。96年、経営していた学習塾の赤字を埋めるために『空想科学読本』を執筆したところ、60万部のベストセラーに。だが、塾は潰れてしまい、99年空想科学研究所を設立して研究と執筆に専念。2007年、希望する全国の高校図書館に向けて「空想科学 図書館通信」の毎週無料配信を開始する。13年スタートの『ジュニア空想科学読本』(角川つばさ文庫)が小中学校でブームになるなど、読者層はいまなお拡大し、著書の総累計部数は500万部。明治大学理工学部非常勤講師も務める。

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