筆跡心理学×美青年書道家の最新刊が発売! 谷春慶著『筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。鎌倉の花は、秘密を抱く』

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

『筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。鎌倉の花は、秘密を抱く』(谷春慶/宝島社)

人間嫌いの毒舌美青年・東雲清一郎(しののめ・せいいちろう)が「文字」から様々な謎を解決していく「筆跡ミステリー」の最新3巻『筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。鎌倉の花は、秘密を抱く』(谷春慶/宝島社)が6月に発売されたが、みなさんはもう読んだだろうか?

2017年夏にはコミカライズも始まるというので、今最も話題と期待を集めているキャラミス(キャラクターミステリー)の一つと言っても過言ではない本作。

これまでのあらすじをざっくりまとめると、大学生の近藤美咲(こんどう・みさき)が出会った同級生の東雲清一郎は、その端整な顔立ちとは真逆で、超毒舌の人間嫌い。ゆえに学内では「アンタッチャブル」な存在なのだが、美咲は祖父の遺品に関することで、どうしても「筆跡鑑定」をしてもらいたく、清一郎に依頼をしたが、冷たく拒絶され……。

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と、いうところから、何だかんだで2人の関係は続き、いくつもの「筆跡ミステリー」を解決していく。2巻のラストでは、美咲が清一郎に対して、友達以上の気持ちを抱き始める(詳細はこちら ▶ //ddnavi.com/news/372425/a/

さて、最新刊の内容だが、色々と読みどころが多い。清一郎の「理論的毒舌」に、挫けずまっすぐ向き合っていく美咲ちゃん。本巻で2人の関係が大きく変化するわけではないのだが、確実に距離が縮まっている様子がファンとしては嬉しい。……と言っても、清一郎は変わっていなくて、ただ美咲ちゃんが清一郎の扱い方に慣れてきただけな気もするが……(笑)。

清一郎と美咲ちゃんの話も然ることながら、今回の一番の目玉は、書道部の部長・松岡の「過去編」ではないだろうか。松岡は超ポジティブ女の子大好きチャラ男。過去に清一郎の名前を騙って女の子をひっかけていたこともあり、「法治国家でなければ、殺してる」とまで清一郎に言い捨てられるような男だ。

本作では、その松岡に似つかわしくない純粋で、はかなくも悲しい「過去の恋愛」が語られる。松岡には高校時代から好きな女性の先輩がいたのだが、彼女は若くして亡くなってしまう。その彼女が自分に遺したのがニ冊の御朱印帳。一冊は先輩のもので、鎌倉のお寺の御朱印がいくつか捺されており、もう一冊には最初のページに「言葉をきちんと聞くように」と書かれているだけであった。

松岡はどうして先輩がこの御朱印帳を自分に寄越したのか、その真意を知るため、清一郎や美咲に協力を仰ぎ、実際にお寺巡りをすることに。
御朱印帳を通して「先輩の想い」が明らかになった時、ジン……と胸にくるものがあった。さらに松岡がどうして女の子大好きチャラ男なのかという理由も分かり、元々(ある意味)好きなキャラだったが、ますます松岡のことが好きになった。

巻数を重ねるごとにキャラクターたちに魅力が出てくる本作。次巻はそろそろ清一郎と美咲ちゃんの関係も大きく進展!?……してくれればいいなぁ。

文=雨野裾