大ヒット小説『アキラとあきら』にあの”有名銀行員”の影が? 池井戸潤ワールドの華麗な連鎖

文芸・カルチャー

2017/7/18

『アキラとあきら』(池井戸潤/徳間文庫)

 同じ名前を持つふたりの青年。それぞれの宿命を、彼らは乗り越えられるか――。5月の発売以来、トップセラーを誇る池井戸潤氏の新刊『アキラとあきら』は、対照的な境遇に生まれた少年、山崎瑛(あきら)と階堂彬(あきら)が、矛盾や困難を乗り越えて銀行員となり、さらなる難題に立ち向かう姿を描いた感動作である。

 7月9日から階堂彬を主軸にしてWOWOWで早くもドラマ放映(WOWOWプライム・毎週日曜夜10時~)が始まったこの作品、実は今、読了した人々の間でささやかれている、ひとつの噂があるのだ。

「瑛と彬って、もしかして〝あの人〟の同僚なんじゃないの?」

 〝あの人〟とは、〈倍返し〉の決め台詞で鳴らしたスーパー銀行員・半沢直樹。『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』は2013年にTBSで『半沢直樹』としてドラマ化され、続編『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』もメガヒットした大人気シリーズである。主人公・半沢の勤務先は東京中央銀行だが、この銀行は、産業中央銀行と東京第一銀行というふたつの都市銀行が合併してできたメガバンクという設定。そして、『アキラとあきら』のダブル主人公、瑛と彬が入行したのが、半沢がもともと入行した産業中央銀行であることを、目ざとい読者は見逃さなかったのだ。

 さらに、半沢直樹が1989年入行(推定生年1966年)なのに対し、瑛と彬は作者の池井戸氏と同じ1963年生まれ。すべてストレートにいけば、入行年は1985年になる。つまり、瑛と彬は半沢の4つ上の、バリバリの「バブル組」ではないか!

 かつて『ダ・ヴィンチ』本誌のインタビューで、登場人物の出身銀行について「そう厳密には辻褄を合わせていません」と語っていた池井戸氏(2015年8月号・特集「池井戸潤」より)。『アキラとあきら』の物語は、主人公たちが30代前半の頃で終わっており、また「半沢直樹シリーズ」の第1作『オレたちバブル入行組』の物語は1990年代後半から始まっているため、両作の物語世界は重なっていない。しかし、もし設定通りなら、山崎瑛の敏腕バンカーぶりを半沢直樹はきっと眺めていただろうし、また山崎は、後輩・半沢の東京中央銀行での活躍を、おそらくまぶしく見ていたはずだ。

 さらに、産業中央銀行と合併した東京第一銀行には、同じくドラマ『花咲舞が黙ってない』(2015年・日本テレビ系列で放映)で人気を博した『不祥事』ほかのヒロイン、花咲舞と同僚・相馬健が勤務している。とういうことは、山崎と半沢と花咲舞が同じ銀行のどこかですれ違い、いつか机を並べる日が訪れるのでは? でもその場合、ドラマの放映局はどこになるのか?

 期待と不安(?)が入り乱れる中、『連続ドラマW アキラとあきら』はスタート。第1回は、ふたりの主人公が新入社員研修で激しくぶつかり合う場面から始まった。6月26日に開催された完成披露試写会でも、観客から「すごい迫力!」と感嘆の声が上がったシーンは、原作の池井戸氏も「僕の好きな場面のひとつ。スリリングにまとまっていたのではないでしょうか」と感想を寄せた。ドラマは全9回。心の目を凝らせば、どこかに半沢の姿が見える……かも?

文=大谷道子