社会

四川省地震と自衛隊機、フォークランド紛争と日韓関係―今さら聞けない現代史のあれこれを、受験世界史専門塾から学ぶ

『3時間半で国際的常識人になれる ゆげ塾の速修戦後史 欧米編』(ゆげ塾/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 受講生の半数が早慶・国公立に進学、ほぼ全員がセンター試験で9割以上の得点率と評判の、池袋にある小さな受験世界史専門塾・ゆげ塾。その教えを受験生だけのものにしておくのはもったいないということで、講義を文字起こしして編集されたのが『3時間半で国際的常識人になれる ゆげ塾の速修戦後史 欧米編』(ゆげ塾/ディスカヴァー・トゥエンティワン)です。

 本書がテーマとしているのは欧米の戦後史で(中南米・中東・アフリカなどを取り上げた下巻は2017年末発売予定)、情報量よりも読みやすさと最小限に整理された要点で、読者の失われた世界史の記憶を補填してくれます。電車の中で立ちながら読んでいてもパッと目に入る短く平易な言葉で、複雑な記述になりがちな冷戦以降の欧米史がまとめられています。歴史は古代から積み重ねられてきましたが、戦後史の知識というのは私たちの実生活においてどのように活きてくるのでしょうか。

 冒頭で、参考書としてではなく、一般書として使用する読者に向けて、著者は2008年に甚大な被害を出した四川省の地震での出来事を例に挙げています。

中国政府は日本政府に要請した。「被災地に支援物資を運んでほしい。その際、自衛隊機でもかまわない。」
日本政府はこの文言通り、自衛隊機を準備した。自衛隊機であれば、すぐに楽に出せる。
しかし、一部の官僚には解った。「やばいことになるかも…」
彼らは、急ぎ、民間機を押さえはじめた。

 この出来事の背景には、日本が1930年代末の日中戦争で何百回という爆撃を中国・重慶で行った重慶爆撃の歴史があります。重慶は四川省の中心地で、「自衛隊機でもかまわない」という言葉は、中国の世論を無視してでも現地に救援に来てほしいぐらい緊急だということを意味していたのです。

 この例は国同士レベルでの話ですが、個人個人でのやり取りで歴史的文脈が現れることもあります。たとえば、ドイツに旅行した日本人観光客が時々「今度はイタリア抜きでやろうぜ」というジョークを言われるのには、第二次世界大戦中における日独伊三国同盟の歴史が関係しています。

「歴史は繰り返す」といいますが、過去の歴史から学び、過ちや悲劇を繰り返さないように努めることは原水爆両方の被害を世界で唯一受けた国・日本が一番痛感している点でしょう。日本は島国なので、たとえばヨーロッパの島国・イギリスの歴史に学ぶ点は多いです。イギリスとアルゼンチンが寒冷で草しか生えていないような島の領有権をめぐって起こしたフォークランド紛争から、著者は日本への教訓を読み取ります。

つまりどちらもアメリカの友好国であり、対外的緊張もないのにそれほど価値のない島を奪い合うために戦争をしたのだ。
これは日本と韓国の関係に似ていないだろうか。
竹島自体に、大した資源や産業はない。
日本も韓国もアメリカと同盟国。
確かに対外的緊張はあるが、戦争をするほどではない。

 昨年、韓国のインターネット掲示板で「EUのようにアジア連合をつくると言ったら賛成する?」というスレッドが話題になりました。遠い未来の話のように感じますが、発展途上国と言われていた東南アジア諸国の経済成長が先進国に追いつき、いつかそうなる可能性はゼロではないかもしれません。本書を手に、知識の整理・復習だけでなく、未来へも思いを巡らせてみてください。

文=神保慶政

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