主婦雑誌で、離婚とセックスレスのタブーも犯す… 『LDK』×『レタスクラブ』編集長対談【3】雑誌の融合のしかた

ビジネス

2017/7/28

(左)『レタスクラブ』松田編集長(右)『LDK』木村編集長

■流行を追うだけでは差別化できない。読者に響く切り口とは?

木村 たとえば、季節の変わり目に無印良品を取り上げようという話になったとき、“無印のいいモノ”をただ取り上げるだけの企画はやる意味がないですよね。もう読者に飽きられてますし。

松田 ええ、ええ。

木村 じゃあ生活者は無印とどういう関わり方をしているのかな? と考えると、無印が大嫌いな人ってそんなにいないと思うんですよ。でも、僕も無印は嫌いじゃないけど、ちょっと高いんですよね。多分、多くの人が「ちょっと高い」と思ってるはずなんです。

松田 確かに。

木村 一方で、ニトリとかカインズホームとかトップバリュには、無印のそっくり商品が山ほど出ています。だから、全体の半分ぐらいそっちのほうを利用すれば、無印っぽい部屋になると思って、「無印的 部屋づくりの新常識!!」っていう企画をやったら大好評でしたね。

松田 それ、すごくいい企画ですね!

木村 無印じゃないと絶対ダメなものと、無印じゃなくても他で代用が利くものを仕分ける企画だったんですけど、ほぼ完売に近かったです。

松田 素晴らしい!

木村 「無印でこれ買うなら、イケアで同じようなもの買ったほうが安いな」とか。自分の実感からはじまった企画です。メーカーに気を遣うことなく、何でも言いたいことが言えるタブーがない雑誌だからできる企画ですよね。

松田 タブーがない雑誌、うらやましいです(笑)。

■主婦雑誌で、離婚とセックスレスの2大タブーを犯す

木村 逆に松田さんに聞きたいんですけど、タブーを犯せない立場でどうやって部数を伸ばしてるんですか?

松田 いや、地味にタブーを犯してますよ。コミックエッセイで、離婚ものとセックスレスものを入れてます。この2つは幸せ主婦雑誌の大きなタブーだと思いますし、それをズバッと描いている2つの連載は“奥様劇場”と呼んでます(笑)。でもこれでもまだ物足りないので、もっと過激な作品をやりたいと思ってるんですよね…。

木村 アハハハハ。

松田 でも、離婚漫画をはじめたときは、読者が引いちゃって引いちゃって。

木村 そうなんですか?

松田 シーンとなって、ザーッと引きました(笑)。読者アンケートにも「こんな暗い漫画は載せないで」とかありましたし。しかし今ではコミックエッセイの連載の中で支持率1位になりました。だんだん、読者がこの作品の面白さに気がついてくれているようです。

木村 コミックエッセイを掲載することで、読者層は多少入れ代わりました?

松田 そうだと思います。昔のレタスクラブのほうがいい、というご指摘もいただきますし。逆に新しく増えたのは、コミックエッセイファンや、連載を開始した声優の増田俊樹さんのファンの方ですね。

木村 増田さん、そんなに人気なんですね。コミックエッセイはやっぱりいいですよね。うちでもやりたいんですけど、どうすればいいんですかね。

松田 どういった内容の作品を入れたいんですか?

木村 我々は毎号、いろんな商品のテスト検証を時間と手間暇かけてやってるんですけど、その過程は誌面のスペース上、ほとんど載せられないんですよね。結構、失敗もあったりして面白いので、すごくもったいなくて、そういうのをルポする漫画とかあったらいいんじゃないかなと。

松田 確かに、面白そう。読者も気になりますもんね。
木村 どなたか興味ある方がいらっしゃったら、ぜひご紹介いただきたいです。

松田 わかりました。ちょっと考えますね。預からせてください。

■雑誌は融合したほうが面白い

松田 9月25日発売号で、京都特集やるんですけど、京都に『ハンケイ500m』っていうフリーマガジンがあるのご存じですか? 配布した瞬間に全部はけて入手不可能になるような人気雑誌なんですが。フリーマガジン大賞も受賞されている。

木村 へぇ、知りませんでした。そういう雑誌があるんですね。

松田 そちらの円城編集長とあるご縁からすごく仲良くなったので、その方にレタスの京都特集8ページを自由につくってもらうことにしたんです。

木村 いいですね、それ面白い。

松田 ページジャックみたいな感じで、デザインも全部、先方のデザイナーさんがつくってくださることになったんです。その編集長さんは生まれも育ちも京都なので、私たちが知らないような「京都のツボ」を隅々まで知ってるんですね。

木村 最高じゃないですか。

松田 その円城編集長も熱い方で、「雑誌はまだまだできることがたくさんある!」っておっしゃってました。雑誌ってすごく人間的な体温のある媒体なので、いろいろ融合していったほうが面白いと思って。そこで円城さんに京都企画を依頼したわけですが。

木村 面白いですね。

松田 その流れで『LDK』さんもうちで連載しません?(笑)

木村 いいですねぇ。

松田 レタスでは取り上げないけど、『LDK』さんだから取り上げるネタって、あると思うんです。

木村 なるほど。媒体同士、お互いの足りない部分を補い合うってアリですよね。今までと同じことやっていても先細るだけですから。僕は、編集者が記事づくりに慣れるのもよくないと思ってるんです。「この企画だったらこの人」っていう風に思いはじめたら、あえて担当から外すようにしてます。

松田 ああ、なるほど。でもそれ、結構編集長として勇気いる行動だなあ。

■編集長は野球の監督と似ている?

木村 長年収納特集担当、100均特集担当、と何となく決まっていたメンバーがいたんですけど、担当をがらっと代えたんですよ。そしたら誌面がすごくよくなりました。なぜなら、同じ担当だとどうしてもマンネリ化しちゃうので。慣れない人が担当すると、多少荒削りでクオリティが若干低くなっても、そのぶん面白さが増すんですよね。慣れてくると、「これは無理」とか「できない」とか、自分に制限をかけはじめるので。

松田 そうですね。慣れてくると、限界がわかるので、誌面の世界観が縮小してきますよね。 以前の『レタスクラブ』はまさにそれでした。

木村 全部ぶっ壊したんですか?

松田 担当のシャッフルや見直しはしましたね。でも料理雑誌の世界は独特なので、一朝一夕では変えられない。じわじわ変革している感じです。その分特集(整理収納、美容、お金など)ページはいろいろと新しい試みを行ってます。

木村 (突然)松田さん、結構、強そうですよね。怒ったら怖いですか?

松田 そ、そんなことないと思いますけど(笑)。でも、確かに怖がられてますね。
 よくメンバーに「圧がすごい」と言われます。

木村 言うべきことは結構、言うほうですか?

松田 いや、言わないことも多いです。

木村 それはなぜですか?

松田 まあ、キャンキャン言っても、逆効果なこともありますし。

木村 僕もそれどうしようかなと思うことありますよ。言いたい時だってありますし…。書籍をずっと担当されていらっしゃったから、チームで雑誌をつくるって意思疎通の問題が大変じゃないですか?

松田 確かに大変ですが、自分を「野球部の監督」だと思ってやってます。この子は今調子がいいから4番で!とか。誌面でも、この2Pはルーキーによる斬新な企画だから、この4Pはベテランで守りを固めようとか。そういう風に考えると、結構、面白いです。

木村 面白いし、我慢もできますよね。

松田 そうそう、「ここで勝たないといけない」っていうときに、私がヤジったりマウンドに躍り出ると自分が退場になる可能性もあるので、あとはメンバーに任せる。

木村 なるほど(笑)。

松田 今後、やってみたいこととかありますか?

木村 『LDK』って、いろんなジャンルを取り上げてきたなかで、これは独立させられるなっていう企画が結構いっぱいあるんですよね。たとえば、コスメを徹底検証して評価した『LDK the Beauty』というのを出したら10万部ほぼ完売だったんです。だからコスメ方面に明るい部員を独立させて新しい編集部にしました。8月から隔月刊誌として創刊します。

松田 おお!

木村 もちろん広告部には、美容系広告は全部断ってもらうようにお願いしています。『MAQUIA』『美的』『VOCE』にどう食い込んでいくか、楽しみですね。『LDK』が選ぶベストコスメ大賞とかもやりたいです。

松田 私、買います!(笑)

取材・文=樺山美夏

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