杏、吉岡里帆、市川紗椰…70人が「十歳までに読んだ本」とは?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

『十歳までに読んだ本』(西 加奈子、益田ミリ、 ほか全70名/ポプラ社)

 私たちの人生の「根っこ」を作り出しているのは、子どもの頃に大切に読んだあの物語だ。ドキドキしながら夢中で読んだあの本。怖くてたまらなかったけれど、どういうわけか忘れることができないあの本。主人公に感じた憧れ、羨望…。幼い頃、本を読んで一喜一憂した思い出は、大人になった今も私たちの人生を形作っているに違いない。

 ポプラ社創業70周年記念作品『十歳までに読んだ本』は、総勢70名の著名人が自身の「根っこ」となった大切な一冊について綴るエッセイ集。寄稿しているのは、西加奈子さんや辻村深月さん、森見登美彦さん、柚木麻子さん、万城目学さんなどの小説家はもちろんのこと、さん、吉岡里帆さんなどの女優・タレントや映画監督、スポーツ選手まで、バラエティ豊か。著名人たちの「宝物」が詰まった珠玉のエッセイ集だ。

 父親の転勤でカイロに転居することになったのに、その頃読んでいた『ミイラの作り方』の影響でエジプトが怖くてたまらなかったという小説家・西加奈子さん。幼少期は、青鬼が赤鬼のために悪者を買って出る『泣いた赤おに』の物語に「どうしてそこまでするの?」と思っていたが、プロレスラーになり自己犠牲の精神を知ったという棚橋弘至さん。図書館員のおばちゃんに「もうこれ読んでいるの?」とびっくりしてもらえるのが嬉しくてたまらず、背伸びをして『ライ麦畑でつかまえて』などを読んだというモデル・市川紗椰さん。…昔読んだ本を振り返ることは、子ども時代を振り返るということ。あらゆる著名人たちのエピソードを読んでいると、「誰にでも子ども時代があるんだなぁ」という当たり前のことに、ついほのぼのとしてしまう。そして、それは、おもしろいほどに、その人の現在を作り出す「原点」となっているということに驚かされるのだ。

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 あなたは子どもの頃、どんな本を読んでいただろうか。著名人たちの子ども時代を垣間見ながら、自分自身の思い出にひたってみてはどうだろう。あたたかいエッセイ集は、子どもへの本選びの指針となるだけでなく、大人たちの癒しの一冊となるに違いない。

文=アサトーミナミ

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